数々の三味線と民謡のコンクールで優勝・入賞を果たした期待の新人、梁川トシヒロさん(キム・ジュンホ・17・父は韓国出身、母は在日3世)が、7月28日に神奈川県川崎市の産業振興会館ホールで行なわれた「第4回 チャリティコンサート ペルーの働く子どもたちへ」に出演し、見事な演奏を披露した。
第1部で行なわれた「ジョイントコンサート」に登場した梁川トシヒロさんは、サックスの藤田淳之介、ピアノの堀内なつみと共演、津軽三味線と西洋楽器の見事なコラボレーションを披露した。
オープニング曲の津軽三味線のソロ「津軽じょんから節」の演奏が始まると、会場を埋め尽くした観客は力強く刻み込むようなリズムに身を委ねた。2曲目は誰もが耳にしたことがある「ルパン三世のテーマ」。梁川さんは津軽三味線からエレキ三味線に持ち替え、ここからサックスとピアノ、エレキ三味線という斬新な組み合わせのコラボレーションが始まった。
最近では津軽三味線も多種多様な西洋楽器とのセッションなどが行われることから、アンプに接続できるエレキ三味線が考案され、徐々に普及し始めているという。
沖縄の三味線「三線」の音色が印象的な沖縄民謡「島唄」では、梁川さんの静かで心に染み渡るエレキ三味線の音と優しい歌声がマッチして、客席一杯に癒しを与えた。
途中、サックスの藤田淳之介とのトークを交え、津軽三味線との出会いを披露。子どもの頃に所属していた少年野球チームの友人の父親が三味線をやっていて、その話を聞いた梁川さんの母親が興味を持ち、親子で一緒に始めたという。藤田さんが「10歳の頃に三味線を始めたそうだけど、ミュージシャンとしては遅くに始めたほうでは?」と梁川さんに聞くと、「藤田さんだって中学のブラスバンドでサックスを始めたでしょう」とすかさず反撃し、会場は笑いに包まれた。
そして、サックス藤田のオリジナル曲「手紙」、平井堅が歌い大ヒットした名曲「大きな古時計」をしっとりと歌い上げ、ペルー関連のコンサートということで「コンドルは飛んでいく」をダイナミックな演奏で披露。
最後の曲、チック・コリアの代表曲「スペイン」の演奏前に梁川さんは「今回、チャリティー公演の舞台に立てたことを非常に光栄に思います。私たちの演奏が少しでも力になればと思います」と語り、歌詞もないメロディーだけの曲を、梁川のエレキ三味線に合わせて会場全員の手拍子で幕を閉じた。
会場には柳明桓・駐日韓国大使夫妻、駐横浜韓国総領事館の朴ジョンチョル総領事をはじめ、梁川さんの父親の金ジョンチョルさん(東洋オンラインジャパン代表取締役)、母親の梁美花さん、祖父の金權萬さん(元駐日韓国大使館参事官で東京、福岡、札幌の総領事を歴任)の姿も見られた。
柳大使は「今回はじめて演奏を見られるのでとても楽しみ。三味線や民謡のコンクールでそれぞれ8つもの賞に輝いたと聞いている。こうしたチャリティコンサートに出演することは非常に意味あることだ」と語った。
1990年生まれの梁川さんは、2002年に12歳で「日本民謡協会少年少女全国大会」入賞、翌年「第94回神奈川県民謡協会春季大会」優勝、05年に「日本民謡協会少年少女全国大会」優勝を果たすなど、これまでに8つの民謡大会で優勝、準優勝を果たした。
民謡だけに留まらず、04年「全国津軽三味線コンクール大阪大会少年少女の部」準優勝、05年「第2回津軽三味線全国大会in KOBE少年少女の部」優勝をはじめ、これまでに8つの津軽三味線の大会で優勝・入賞を果たし、今後の活動に注目が集まっている。