厳しい金融環境の中、冬の時代に入ったパチンコ業界の連鎖倒産も予想され、在日信用組合としては新たな難題をかかえることになった。在日韓国人信用組合協会(韓信協)は10日、第56回通常総会を開き、この問題に対して融資先リスク管理を強化すべきだという方針を打ち出した。また、会員組合間の合併を継続推進することを確認、延期されていた横浜商銀と北陸商銀の合併は12月25日に実施すると報告された。この合併成功いかんは今後の広域合併の試金石になりそうだ。
韓信協加盟組合は現在8つ。横浜商銀と北陸商銀の合併以降は7つになる。かつて40を超す会員組合を誇っていただけに、規模は大幅に縮小した。かつて2兆円を超えていた預金量は4844億円にとどまる。しかも、当面パチンコ業界の苦境が伝えられえており、これへの対応も迫られている。いわゆるスロットマシンの5号機問題である。
総会では、「行政指導により今年6月末(一部マシンは9月末)までに射幸性の高いマシンから射幸性が抑えられた5号機という機種に入れ替えなければならない」として「業界は顧客離れによる収益激減とマシン入れ替え費用負担という問題に直面しており、倒産が相次ぐ深刻な事態になっている」と厳しく認識。
金融機関の最優先のリスク管理項目として厳正なリスク管理に努めるべきであるとの方針を示した。
ただし、「会員組合はこうした苦しいときこそ、“最後の救いの手”として機能すべきだ」として、顧客側も事業の状況を包み隠さず申告し、相談体制を組むなど危機克服へ向け力を合わせることを確認した。
洪采植会長は、「会員組合の融資額の相当額が同胞遊技業関連取引先であるため、遊技業の経営状況は会員組合の経営に決定的な影響を及ぼすので、その動向を鋭意注視しながら対応すべきだ」と強調した。会員組合の多くで、融資先の40%以上(金額基準)が遊技業関連とされている。
会員組合の合併については、「地域に拘束されず可能な所からの合併」を継続推進することになったが、横浜商銀と北陸商銀の合併推進過程で明らかになったように、合併条件をクリアするためには繰り越し欠損を全額処理するため大幅な減資が避けられない。
また、合併後には適正自己資本比率を維持するための出資金増資の負担も抱えている。このため、合併が容易でないのも事実だ。
協会としては、不良債権処理が終了していなかったり収益が上向いていない会員組合を対象に合併の可能性を追求する方針のもと、経営陣の必死の努力を求めている。
横浜商銀と北陸商銀の合併は12月25日に実施されることになったが、横浜は7割減資で繰り越し欠損を処理したものの、今後合併組合は資本増強など課題は残っている。一度合併が延期しており、再度の延期は金融当局から認められないので、実現するため背水の陣で臨むしかない。その結果は、今後の合併推進に大きな影響を及ぼしそうだ。
一方、合併に対しては韓国政府からの支援資金156億5000万円の運用益から一定額を支援している。05年の九州幸銀と佐賀商銀の合併に際しては低利で1億円の支援が行われた。
その支援資金をめぐる固定金利化の問題が、無事決着したと報告された。同資金は日本の金利変動付きなので、公定歩合が上がると運用益が減少したりマイナスになるなどの影響を受ける。このため協会は当初の0・35%の金利に固定するよう求めてきた。
当初、韓国銀行は拒否したが、駐日大使館の働きもあり、固定金利が実現。さらに新韓銀行が取り扱い手数料を0・05%引き下げた。これにより支援金の金利は0・30%に固定され、運用益をあてている会員組合経営基盤強化支援基金の10億円確保が確実になった。
今回の総会ではまた、2年半前に脱退した近畿産業信用組合の復帰問題が報告された。今年3月に会長団が近畿産業信組を訪れ、復帰を要望した。
兪奉植会長は自分は反対していないが理事会で反対されているので、今後検討すると回答。その後4月26日の近畿産業信組理事会でこの問題が話し合われたが、現段階では復帰するメリットはないので保留するが、継続論議するとの連絡があったという。
洪会長は、「継続論議するということなので、近いうち復帰すると期待している」と語った。
近畿産業信組の預金量は5802億円で、会員組合すべての預金量(4844億円)を上回る。協会に復帰すれば韓信協のパワーアップにつながる。厳しい環境下にあるだけに、復帰の要望は強いものがある。