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2007/06/22

<在日社会>韓日学者が共同シンポ・「歴史認識共有は可能」

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         約200人が参加した歴史シンポ

 国際シンポジウム「歴史教育をめぐる日本と韓国の対話」が16日、東京・両国の江戸東博物館で行われ、韓日の学者、一般市民、学生など約200人が参加した。シンポでは、これからの韓日歴史教育の方向性や共通教材作成のさらなる可能性などについて話し合われた。

 ソウル市立大学校と東京学芸大学の教員を中心に作成が進められてきた韓日歴史共通教材は今年3月、韓国では「韓日歴史共通教材は今年3月、韓国では「韓日歴史共通教材」(図書出版ヘアン)、日本では「日韓交流の歴史」(明石書店)として同時出版された。同書の出版を受けて、ソウルで今春シンポジウムが行われ、今回東京でのシンポジウムとなったものだ。

 教材作りは97年10月に第1回が始まり、2005年1月までに全15回、韓日で相互に行われてきた。メンバーは韓日合わせて40~50人。両大学の教授同士の交流が進んだだけでなく、大学同士の交流も進み、相互留学も実現し、この10年間で30人の交換留学生が行われるなど、学生同士の関係も深まった。そのため、この日のシンポジウムには学芸大学生や同大学への韓国人留学生の姿も多く見られた。

 李存熙・歴史教科書研究会会長は、「同書の刊行は学者と教師による共同研究という点に大きな意味がある。両国の教育現場での問題点をそのまま投影することが出来たからだ。この研究成果は韓日だけでなくアジア全体の歴史教育の助けになるはず」と述べ、さらに「今回の成果を学校の授業現場にどう結び付けられるかが課題であり、両国政府と学界、一般国民、特に政府の(広めようとする)姿勢が重要」と強調した。

 君島和彦・東京学芸大学教授は、「日本人の韓国認識と韓国人の日本認識、さらに在日韓国人などを取り上げた。在日韓国人については彼らと共生する日本人に歴史を理解してほしいし、同時に比較的理解の乏しい韓国人にも知ってほしいと考えた」と、在日韓国人について記述した意味を語った。

 鄭在貞・ソウル市立大学校教授は、「共通教材作成を通じて、韓国と日本は国家や民族を越えて歴史認識を共有することができるということを照明した。また、そのためには相互理解と信頼が必要不可欠な条件であることを示した。さらに両国のナショナリズムを相対化するためにも有効であった」と語り、「歴史の葛藤を克服するための対話と協力」を促進させる必要性を強調した。

 共通教材、歴史共同研究に対する関心は他の大学にも広がっており、学習院大学、東海大学などでも始める動きがあるという。

 また、韓日両政府による「第2期韓日共同歴史研究委員会」第1回全体会議が23日に都内で開かれ、今後の研究の進め方などを話し合う。官民の歴史共同研究が今後どのような成果をもたらすか注目される。