在日コリアン弁護士協会がこのほど総会を開き、第3代目の代表に金喜朝弁護士(大阪)を選出した。金喜朝新代表に話しを聞いた。
――新会長の抱負は。
在日コリアン弁護士協会は、在日コリアンへの差別撤廃、在日コリアンの権利擁護・民族性の回復(民族教育の保障等)・政治的意思決定過程に参画する権利(参政権・公務就任権)の確保を設立趣意として、2001年に結成された在日コリアン弁護士の団体だ。当初の会員数は28人だったが、その後、司法試験合格者数の増加もあって、現在では60人を超えている。
引き続き、設立趣旨に賛同してくれる若い在日コリアン弁護士に参加を呼びかけ、会内での議論をさらに活発にし、協会の設立趣意に適う活動を続けていきたい。
――国政参政権など政治的権利をどう勝ち取っていくか。
当協会は、2001年に日本国籍取得法案が浮上したことを契機に設立された。この設立経緯からしても、参政権等の獲得は、優先的に取り組むべき課題と考えている。
政権交代の可能性が言われる中、地方参政権法案や日本国籍取得法案が再度提出される可能性が高まっていると認識している。法案が提出された際には適宜意見を公表するなどして、在日コリアン弁護士としての責務を果たしていきたい。
――いまの在日社会の課題をどう見ているか、および在日社会への提言を。
在日コリアンおよび在日コリアン社会のあり方が多様化していて、一つの切り口やモデルでは語りつくせない状況が進行している。民団など既存の団体や各種市民団体の活動と連携して、課題に取り組んでいきたい。
課題の解決に向けた私たちの取り組みとしては、地方参政権や日本国籍取得に関する規定も包摂した在日コリアン基本法(仮称)の制定に向けた活動が挙げられる。私たちの役割は、すでに公表されているいくつかの試案を参考にしつつ、基本法の細目を示すことにあると考えている。
我々法律実務家に秀でた点があるとすれば、生起する問題に直接触れ、その解決に関わっていることにある。このような私たちの立場から、積極的に試案や細目作りを進めていきたい。
――今後の活動予定は。
今年2月に「裁判の中の在日コリアン 中高生の戦後史理解のために」(現代人文社)を上梓することができた。第2弾として、在日コリアンの親族・相続問題に関連した韓国家族法の実務書を企画・執筆中であり、早ければ来年春頃に刊行予定だ。引き続き情報発信に努めていきたい。
また、情報発信のツールとして、ウェブサイト(ホームページ)を現在準備中だ。
さらに、在日コリアンの差別撤廃や権利擁護に関する集団訴訟に対しては、所属の弁護士が積極的に関与するなどして、引き続き支援を行っていきたい。