在日韓国人信用組合協会(韓信協)は15日、都内のホテルで第57回通常総会を開き、厳しい経営環境を乗り切るため自己資本の増強に速やかに全力を入れて取り組むことを打ち出した。洪采植会長(中央商銀理事長)は、「3月末決算はかろうじて乗り切ったが、今後も大変厳しい状況が続くことが予想される」との見方を示した。
会員組合を取り巻く経営環境は確かに厳しいものがある。特に昨夏以降、融資比率が高い遊技業に不況の波が押し寄せ、融資額の回収や収益面でも影響を受けるため、先行きに対する懸念が高まっている。
金融庁が、自己資本比率を4%から6%に引きあげるよう指導しているのも、危機意識の表れだ。だが、会員組合で6%をクリアしているのはあすか信用組合、中央商銀、広島商銀、岡山商銀の4組合にとどまっており、韓信協は様々な自己資本増強策を提示した。
まず、出資金の増強。そのためディスクロージャーなどの徹底を期すことが重要になる。次に地域を超えた資本増強の有効な手段となっている優先出資と、自己資本にも組み込める劣後ローンの活用。すでに一部の会員組合で優先出資証券は発行されている。
また、会員組合発行の優先出資引き受け業務などを行う「韓信協合同会社」を9月までに設立し、適正自己資本比率を確保できない一部会員組合に対して、自助努力を前提に優先出資の形式で支援する計画も打ち出した。資金は、10億円規模の会員組合経営基盤強化支援基金を活用する。
さらに、韓国政府に対する自己資本増強のための支援要請。洪会長は、6月の本国要路訪問の際、自助努力にも限界があるとして、李明博大統領に優先出資の形での緊急支援を要請したと明らかにした。
総会では資本増強とともに、民族金融機関生き残りのため、近く会員組合全体の合併枠組みを提案する方針が明らかにされた。昨年の旧横浜商銀と旧北陸商銀の合併以降、会員組合間に合併の話がないが、協会は生き残りのためには合併が必要だと判断している。
なお、九州幸銀の呉龍夫・新理事長が、韓信協の理事に就任した。
全国の信用組合数は2年続けて減少、3月末現在で164組合に減った。最盛期の3分の1以下だ。
在日韓国系信組もかつては全国各地で40を超えていたが、現在は韓信協会員外の近畿産業信組を含めても8組合にすぎない。ボリュームも縮小し、会員7組合の預金合計は3月末現在で5758億円(前年同期比1・5%増)、貸出金は4197億円(同1・7%減)にとどまっている。近畿産業信組の預金を合わせると1兆円を超すが、それでも最盛期の半分にすぎない。
いままた資本増強に迫られており、生き残りをかけて在日信組は正念場を迎えたようにみえる。