広島県で病院・老人ホームなどを経営する在日2世の姜仁秀氏(八千代病院理事長)が、6000万円を寄付して、「日韓友好親善刈田地区まちづくりセンター」を寄贈した。地域での日韓交流の拠点とし、日韓友好に貢献したいとしている。
安芸高田市に新築された同センターは、木造平屋建てで敷地面積753・54平方㍍、床面積390・64平方㍍、建築面積400・90平方㍍、研修室2室、ステージ、調理室、和室10畳2間を備え、研修室の仕切りを取り除くと、大広間としての利用が可能になる。地震など非常時には地域の避難所としても活用できる。八千代病院から10分ほどの距離だ。
同センターはこれまで地元の交流センターとして利用されてきたが、木造建築で雨漏りがし、新たに建て直すにも、地方の自治体では財政的に厳しかった。自治体の関係者から姜理事長のところに、「建て替え費用が6000万円かかる。支援していただけないか。無理を承知でのお願い」との相談があった。
姜理事長は申し出を受けて6000万円の建設工事金を供出することにしたが、一つだけ条件をつけたという。名称の冠に「日韓友好」を付けてほしいとの要望だ。それには将来に向けた大きな構想があった。
少子高齢化が進む中、姜理事長は17年前から老人医療・介護を実施してきた。「将来的には韓国や中国、そしてアジアの若者に高齢化社会の担い手になってもらいたい。そのため、最高の医療・介護の知識・技術・ノウハウを惜しみなく伝えたい。そのシンボルとしての意味合いを込めて「日韓友好」の名前を入れたいと考えた」と話す。
同センターの竣工式・贈呈式には浜田一義・安芸高田市市長ら約200人が出席。浜田市長は、「同施設が日韓友好のシンボルとなることを期待したい」とあいさつ。姜理事長は、「同地に一大介護センターを築き、アジアの青年たちに学んでもらいたい」と、その構想を次のように語った。
「センターでは宿泊もできる。100人は可能だ。アジア地域からの視察も可能だ。宿泊する人たちが地域で買い物もする。将来的に医療・介護の学生街にもなる。これが本当の日韓の友好、アジアの連帯になる。町おこしにもなる。安芸高田市は、目立った産業もない。しかし、医療・介護では先進地域だ。いま、八千代病院は職員940人をかかえる地域で一番大きな職場だ。八千代イズム――つまり知識・技術だけでなく、人間のいつくしみ、もてなしの心をアジアの若者に受け止めて貰いたい」
20年前に八千代病院の建設を実現させた姜理事長の言葉だけに、市の関係者も期待を持って受け止めているという。
姜理事長は中国で孤児のための施設・新星館も運営しているが、9月には、孤児のための 新星館2号館が延吉市にできる。20人収容。