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2008/05/30

<在日社会>マルハン・カンボジアに銀行オープン

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    開業を告げるテープカット。(左から)篠原勝弘・日本大使、チーア・チャントー中央銀行総裁、キエット・チョン経済財政大臣、韓昌祐・マルハン会長、パートナーのバンタン氏、申鉉錫・韓国大使

 世界のエンターテイメント企業をめざすマルハン(韓昌祐会長)が、カンボジアで日本の銀行としては初の「マルハン・ジャパン・バンク(MJB)」を開業し、26日から営業を開始した。カンボジアで20番目の商業銀行である。韓会長は、「日本企業との懸け橋になり、5年内にカンボジア1の銀行をめざす」と抱負を語った。さる2月のマカオでのカジノ事業参入に続く今回の海外事業に対する反響は大きく、二の足を踏んでいた日本企業の対カンボジア投資の活性化につながると期待が寄せられている。

 プノンペン市・ノロドム通りの金融街に位置するMJB本店(3階建て、敷地360平方㍍)で22日朝、オープンセレモニーが行われた。揃いのユニフォームの男女行員36人と一緒になって、日本から参加した着物姿の18人のマルハン女性社員が「いらっしゃいませ」と迎えた。キエット・チョン経済財政大臣、チーア・チャントー中央銀行総裁、駐カンボジア申鉉錫・韓国大使、篠原勝弘・日本大使らが韓会長とともにテープにはさみを入れ、ほぼ勢揃いしたマルハンの役員らが見守った。在日世界韓人商工人連合会の金健治前会長、金一雄会長代行、呉龍夫副会長らも日本から祝いに駆けつけた。

 夕方には市内のホテルで開業パーティーが行われ、朝のセレモニー参加者のほか政府要人、経済・金融界、マスコミ関係者ら300余人が参加した。一連のセレモニーでは、カンボジアの王宮舞踊や在留日本人による和太鼓演奏、カンボジア人歌手による日本歌曲披露など文化交流も図られた。

 また、一企業の海外進出では異例なことだが、福田康夫首相、韓昇洙・国務総理から祝電がおくられた。MJBオープンのもようは現地テレビや新聞にも報道され関心を引いた。

 韓会長は、朝夕2度の挨拶で、MJBの役割について「日本企業とカンボジアの懸け橋」をめざすと強調、「日本企業の投資誘致や投資活性化、カンボジアの持続的な経済発展に貢献」し、「高い品質の金融サービスを提供するとともに社会貢献にも尽くす」と明らかにした(挨拶要旨別掲)。

 現在、日本とカンボジア間には直行便がなく、仁川ないしホーチミン、バンコクを経由しなければならないが、それに先駆けてMJBは「金融の直行便」を担おうというものだ。

 カンボジア政府の期待も大きいものがある。チャントー経済財政大臣は、「信用がなければ銀行事業は成功しない。健全な銀行システムは国家発展の重要な役割を担っている」と指摘、「マルハンの銀行事業の素晴らしい成功を願う」とスピーチ。また、チョン中央銀行総裁は、「マルハン経営者の努力を高く評価する。新たな経験と技術で顧客の満足を満たし、カンボジアの銀行業の発展をもたらしてくれるだろう」と述べ、「カンボジアの開発パートナーとなって、特に融資を必要とする中小企業に手を差し伸べることを期待する」と訴えた。

 日本の銀行初進出とあって、篠原大使の挨拶にも熱が入った。「マルハンの今回の銀行設立は大変大きな意味があり、今後日本企業の拠り所になる。韓会長は祖国・韓国にも深い愛着をもっておられ、今度の事業展開は韓国を含めた3カ国、さらには国際的経済関係の強化につながり、投資の呼び水になる」と期待を表明した。

 日本と比べ、カンボジアでの韓国の存在感は大きく、同国1のノッポビルとなる42階建ての「ゴールデン42」も韓国企業が施工中だ。韓国人訪問客もベトナム人に次いで多い年間30万人を超える。

 申韓国大使は「カンボジアには多くの韓国企業が進出しており、今後マルハンの銀行が韓国と日本企業の提携の場になり得る」と語った。

 MJBは資本金2500万米㌦。マルハンが85%を出資、残り15%を現地パートナーのネアック・オクニャー・フォット・バンタン氏が出資している。バンタン氏はアランドロン銘柄などの高級タバコのシェアナンバー1のタバコ製造会社も経営するカンボジア5本の指に入る実業家とされる。現地で銀行設立準備を指揮し、開業式に大挙訪れたマルハン役職員を自宅に招いて歓待したり、縁の下の力持ち役を果たした。妻が韓国人で、「韓昌祐氏とパートナーを結んだのも縁を感じる」とし、「今回の銀行は始まりにすぎず、多くの分野で共同事業を展開したい」と抱負を語った。海外事業はパートナー選びが大事であり、韓会長は素晴らしいパートナーに出会えたと言えそうだ。

 さてMJBはどんな性格の銀行になるのだろうか。マルハンは、長年培ってきた「徹底した顧客サービス」を現地に持ち込み、銀行業でサービス革命を実現させたい考えだ。宮内MJB頭取は、「今後、徹底したサービスで顧客を開拓していきたい」と述べた。

 また、低利融資、マイクロクレジット(小額融資)など中小・零細企業の役に立つ銀行をめざしている。日本企業進出、投資誘致活性化の触媒役も期待される。

 日本のすべての金融機関に先駆けてカンボジアに銀行を設立したマルハン。不安はなかったのか。韓会長は、MJB2階廊下の寄せ書きに「我チャレンジまたチャレンジ」と書き、モットーとするチャレンジ精神を刻印した。今回の銀行業がどんな実を結び、次はまたどんなチャレンジをするのか期待がかかる。


■韓会長の挨拶要旨■

 「本日はフンセン首相の素晴らしいリーダーシップのもとで平和と経済発展をし、アジアの新たなライジング・スターとして注目されるこのカンボジアにおいて、日本の銀行としては初めてとなるマルハン・ジャパン・バンクの開業を迎えることができましたことを大変光栄に存じます。

 昨年6月フンセン首相の日本訪問の際、投資保護協定が締結されたことで、いまカンボジアは日本企業の関心を集めています。このような機運の中で、日本企業の投資誘致や投資活性化、カンボジアの持続的な経済発展に貢献できるマルハン・ジャパン・バンクが誕生しました。折りしも、今年は日本とカンボジアの国交樹立55周年、そして本日はマルハンの創業51周年の創立記念日であります。今後、マルハン・ジャパン・バンクは日本企業とカンボジアの懸け橋になり、地元企業をはじめ、世界各国の進出企業など幅広い分野で高い品質の金融サービスを提供する所存です。同時に、社会貢献にも力を尽くしたいと存じます」