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2008/05/16

<在日社会>在日新時代・ソプラノ、野球で注目株

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               新人演奏会で歌う全詠玉さん

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               プロ入り目指す申成鉉さん

 各界で活躍する在日コリアンの若手が増えてきた。在日3世でオペラ歌手を目指す全詠玉さん(チョン・ヨンオク、23、国立音楽大学大学院在学中)と、韓国出身で日本のプロ野球界から注目を浴びる申成鉉さん(シン・ソンヒョン、17、京都国際高校3年生)を紹介する。

◆在日強く自覚◆

 全さんは5月4日、全国の音楽大学や短大を優秀な成績で卒業した人たちが競う「第78回新人演奏会」(読売新聞社主催、東京文化会館)に出演した。日本のクラシック音楽振興のために毎年開かれている歴史ある音楽会だ。全さんはソプラノ独唱で、モーツァルト作曲のオペラ『後宮からの誘拐』第2幕より「いかなる拷問が待ち受けていようとも」を披露し、大きな拍手を浴びた。

 「モーツァルトのオペラアリアの中でも技巧的な難曲と言われ、音域も広くドラマティックな要素もある魅力的なアリア。大学の卒業試験でも歌った曲で、思い入れも深い。その曲をたくさんの方に聴いてもらって胸がいっぱいになった。これまで温かく指導してくださった先生、いつも無条件に応援してくれる家族や友人への感謝の気持ちがこみ上げてきた。この舞台の経験がこれからの励みになると思う」

 全さんは85年東京生まれ。朝鮮学校から国立音楽大学声楽科に進み、現在は同大学院で声楽を専攻している。

 「音楽好きの一家で育ったせいもあり、幼少時から歌う事が何よりも好きで、大きくなるにつれ漠然と『歌手になりたい』と思うようになった。高校2年生の時、学校で進路調査があり、その時に『自分には歌以外にない』と思い、歌手養成学校へ進みたいと考えていた。しかし、『どんなジャンルの歌を歌うにせよクラシックの基礎を積みなさい』との母の言葉に影響され、国立音楽大学に進んだ」という。

 民族教育を大切にする家庭で育った全さんは、在日としての自覚も強い。

 「いずれは、オペラ歌手として活動したい。日本で、世界で、『在日』という立場から発信していく歌い手でありたい」と、力強く語ってくれた。

◆甲子園めざす◆

 京都国際高校3年生の申成鉉さんは、同校野球部の四番で遊撃手。主軸として甲子園を目指す。右投げ右打ちで身長183㌢、83㌔の恵まれた体だ。90年ソウル生まれで、小学校4年生から野球をはじめた。中学卒業と同時に野球留学し、同校に入学した。1年生の秋にベンチ入りし、2年生の夏には遊撃手のレギュラーを獲得した。50㍍6秒4の俊足で、投手も兼ねる。

 「小さいときから野球が大好きで、日本で野球をやりたいと考え、留学を決意した。野球の練習や高校生活は慣れたが、日本語を覚えるのはいまだに大変」と話す。

 同校では数年前から、韓国からの野球留学生を年に数名受け入れており、現在20人の部員は在日10人、韓国人10人で構成されている。

 12日に行われた春季京都府高校野球大会2次戦最終日の3位決定戦で、同校は立命館宇治に6対5でサヨナラ勝ちし、京都府下のベスト3に入った。これでシード校として、甲子園地区予選に臨むことになる。

 「甲子園は韓国にいた時からのあこがれ。絶対に出たい」

 申選手はプロ球界からも注目されており、試合には日本のプロ球団や米大リーグブレーブスのスカウトも訪れるなど、今年のドラフトでの指名が確実視されている。巨人の李スンヨプ選手と西部ライオンズの中島選手が好きという申選手。

 「日本でプロ野球選手になり、ホームランを打ちたい。大リーグにも興味がある」と、抱負を語る。