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2008/03/14

<在日社会>ラグビー日本代表、在日3世・徐吉嶺さん「在日の誇りを持って戦う」

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    徐吉嶺選手(中央) 「写真提供:ヤマハ発動機㈱A.kubo」

 在日3世のラグビートップリーガー、徐吉嶺選手(23、ヤマハ発動機ジュビロ)が、ラグビー7人制日本代表に選ばれた。朝鮮籍のラグビー選手が日本代表に選ばれたのは初めての快挙だ。徐吉嶺選手に話を聞いた。

 徐選手は愛知県名古屋市出身の在日3世。サッカーJリーグ川崎フロンターレの鄭大世選手とは、同郷で友人の間柄。徐さんも中学までサッカー部に所属していたが、「サッカーは向いていなかったし、テレビでラグビーの試合を見て興味を持った」こともあり、高校入学と同時にラグビーを始めた。

 朝鮮大学校進学後もラグビーを続け、めきめきと実力を発揮。

 「もともとプロでやるのが夢だったし、先輩や友人からも『徐の力ならやれると思う』との励ましを受けて、本格的にプロ選手を志した」

 社会人ラグビーへの応募を続けるが、体が小さいことを敬遠されて次々に不採用。しかし、ヤマハ発動機ジュビロが関心を示し、トライアウトで昨年3月入社した。プロ契約で1年ごとの更新だ。

 徐選手の特徴はスピード。入団会見でも「球を持って走るスピードは負けない。ヤマハの勝利に貢献したい」と語った。

 昨年10月に開幕したラグビートップリーグ、ホームとなるヤマハスタジアムでの試合に11番ウィングで出場。前半41分に逆転トライをあげる活躍を見せ、プロとしてやっていく自信をつけた。

 ハンドオフ(タックルに来た相手選手を片手で突き放す)して、トライに結びつけるプレーが得意。また明るい性格と、だれにも負けない闘志も大きな魅力となっている。

 6日には日本ラグビー協会から、香港セブンスなどに出場する7人制日本代表候補13選手の一人に選出された。日本ラグビー協会は、日本代表選出資格を「日本で出生している、又は両親、祖父母のひとりが日本で出生している、又は第12章に定める登録を行った後、引き続き満3年以上継続して日本に居住している選手」と定めており、国籍に関係なく出場資格を得ることができる。そのため、朝鮮籍の徐選手も支障なく選ばれた。

 徐選手は、「選ばれるとは思わなかったので、とても驚いた。在日として日本に生まれた自分が、代表になることは意義深いと思う。精一杯の力を発揮し、後輩たちに勇気を与えることができれば」と抱負を語った。

 試合は香港セブンズ(3月28日~30日、アデレードセブンズ(4月5、6日)の予定だ。

 「ヤマハで優勝、7人制の次に15人制の日本代表入りが当面の目標。そして将来は、ラグビーの指導者として子どもたちにラグビーの魅力を伝えたい。在日としてのアイデンティティーをしっかり持ち、努力していきたい」
 

  ソ・キルリョン 1985年愛知県名古屋市生まれ。在日3世。180㌢、90㌔。愛称はぶんた。スピードが持ち味。