来年1月に開催予定のアジア大洋州局長会議で、韓国政府が日本政府に対し、公立学校の在日韓国人教員が文部省(当時)の局長通達で「常勤講師」に制限されていることについて、改善を申し入れる。在日教員はこの通達によって、管理職への道を閉ざされてきた。
韓国政府は数年前から同会議で在日教員の管理職登用に道を開くことを申し入れてきたが、進展が認められないため、再度申し入れを行うことを決めたものだ。
在日韓国人の教員登用問題については、80年代に社会問題化したことなどを受けて、91年1月に韓日両政府によって「覚書」が交わされ、「公立学校の教員採用試験の受験を認めるよう都道府県を指導し、採用された韓国人公立学校教員の『身分の安定や待遇についても配慮する』」とされ、在日外国人教員の採用が大きく進んだ。
しかし、文部省は同年3月、「在日韓国人など日本国籍を有しないものを任用することは(常勤講師に限り)可能である」とし、教諭に準ずる講師は「常に教務主任や学年主任等の主任の指導・助言を受けながら補助的にとどまるもの」であるとする局長通知を出した。常勤講師は正式教員に準ずる待遇で、管理職登用も制限される。正式教員の採用は、将来の教頭・校長への道を開くことにつながるため、在日教員が管理職に就くことのないよう、同通達を出したとみられる。
市民団体や教育関係者からは、「韓日覚書の精神に違反し、国際人権上の精神からも問題がある」として、同通達の破棄が求められてきた。
今年4月には、神戸市の教員の韓裕治さん(43)が、学校側から副主任の要請を受けて受諾したが、その直後に覆される事件があった。韓さんは93年に神戸市に採用されており、神戸市の外国籍教員の第一号である。「期限を附さない常勤講師」として働き、今年で教員生活16年目。これまでも副主任の要請を受け、職務を担ってきた。
しかし今回、教育委員会から「91年の文部省通達があるので在日外国人は副主任にはなれない」との回答があり、撤回したとのことで、韓さんや「兵庫在日韓国朝鮮人教育を考える会」などは人権侵害として抗議した。
8月にも再度の申し入れを行い、要望書を神戸市教育委員会に提出したが、「通達」の壁があり交渉は進んでいない。
教育現場の運営は各自治体の判断にある程度委ねられているため、東京や大阪などには外国籍教員の主任がいる学校もあるという。
韓さんは「主任の指導を受ける副主任であり、ましてやこれまで務めてきたのに、今年になって不許可というのは納得できない。局長会議で、『通達』が撤廃されることを期待したい」と話す。