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2008/12/19

<在日社会>在日の歳末風景・不況が各方面の生活直撃

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    厳しい師走をむかえる在日高齢者も多い

 今年も残りわずかとなった。金融危機の影響などで在日社会も厳しい歳末が押し寄せている。在日高齢者の生活、同胞企業、韓国人留学生など各地の表情を追った。

 ウォン安円高が続く中、韓国人学生300人が学ぶ赤門会日本語学校(東京・荒川)では、授業料納付時期をずらして、少しでも円高が緩和された時期に学生が納められるようにした。

 年末で退学して韓国に戻る学生も、例年よりは増えているとのことだ。同校は仕送り以外にバイトで生計を立てている学生が元々多いため、ウォン安の影響は比較的少ないとのこと。

 韓国人留学生が比較的多い東京外国語大学(府中市)では、円高の影響を強く受けている韓国、インドネシア、ネパールなどの私費留学生30人に対し、総額300万円の奨学金支給を決定した。

 在日高齢者の生活はどうだろうか。在日向けデイサービスを行っている福祉関係者によると、「食費を抑えようと買い物に気を使う高齢者が増えている」という。訪問介護などを行っていて、貧富格差は日本社会以上と感じることも多いとのことで、「一人暮らしの貧しい同胞高齢者への支援が必要だ」と強調する。

 世界的金融危機が続く中、在日が多く従事する遊技、建設、不動産、製造、金融、焼肉など、どれもが厳しさをましている。

 カバンなどの皮革業を営む小企業が多い東京の足立・荒川地区、関西のヘップ産業に従事する同胞も厳しい年末となりそうだ。

 荒川のある経営者は、「不況で販売量が増えない上に、3K仕事なので後継者が育たない。韓国からの出稼ぎ労働者に頼っていたが不法滞在の問題などで激減した。廃業が来年は増えそうだ」と話す。

 韓国語の通訳・翻訳業も厳しい。韓国映画は輸入本数が大幅に減った関係で、一部のベテラン以外は仕事が少なくなった。韓国ドラマは人気が定着してはいるものの、テレビ局の買い付け値段が上がらないため、字幕翻訳料が据え置きか、値下がりの動きもあるという。

 同胞有志の寄付金などをもとに在日学生への奨学金事業を行っている韓国教育財団は、不況の影響で寄付金が減る中、運営努力を重ねて奨学金を維持している。関係者は「いまがぎりぎりの状態。在日学生を支援するためにも、同胞の支援をお願いしたい」と話す。

 こういう中、同胞系信用組合の経営安定化は重要課題だ。この間、銀行、信用組合、信用金庫の格付けがマスコミを賑わし、ワースト20に名前が入った同胞系金融機関もある。

 呉賛益・東京韓商会長は、「信用組合は健全な経営努力を行っていることを見せると同時に、同胞企業にとって頼りになる存在感を示すことが大切だ。今年夏にあすか信用組合と東京韓商が協力して預金獲得運動を行った際、以前の東京商銀の経営破綻で離れて行った人たちを訪ね、これまでと違うことを説明して協力してもらった。そういう作業をみなが続けながら、同胞企業、金融機関存続のために地道に努力していくことが、来年はさらに求められる」と話す。