「韓国博物館開館100周年記念特別展―与民偕楽」が、ソウルの国立中央博物館で29日に始まった。1909年に韓国に博物館が誕生してから100周年となるのを記念した展示会で、日本など海外に流出した貴重な文化財も集まった。同展は11月8日まで開催される。
同展では普段見ることのできない文化遺産が多数展示される。安平大君(アンピョンテグン)が夢で見た桃源の光景を安堅(アンギョン)に描かせ、3日で完成したと伝えられる「夢遊桃源図」(重要文化財、天理大学図書館収蔵)は、製作年代が判明している現存の朝鮮朝時代の絵画で最も古い作品だ。
朝鮮朝最高の画家とされる安堅が安平大君の要請を受けて描いた絵に、安平大君はじめ文士21人の詩と文を綴った作品で、2つの巻き物になった同作品は全長112㍍になる。 このうち絵画が占める部分は横1㍍のみだ。
1453年、安平大君が首陽大君(スヤンテグン)に殺害された後、行方不明になっていたが、1893年に鹿児島の島津家所蔵品という記録が発見され、日本に流出していたことがわかった。1939年に日本の国宝に指定され、1950年代初めに競売にかけられたのを天理大が購入した。当時、韓国戦争で疲弊していた韓国は購入金額を負担できなかったためだ。
96年に韓国で公開後、13年ぶりに韓国に渡ったこの「夢遊桃源図」は、29日から10月7日までの9日間だけ展示される。
同展では約150点(国宝・宝物55点)が展示されるが、韓国で初めて公開される作品は11点になる。初めて公開される米メトロポリタン博物館所蔵「水月観音図」や米ボストン美術館所蔵の「熾盛光如来往臨図」も貴重な遺物だ。同時代の絵画で最上級と評価される高麗仏画は世界に約160点しか残されていない。「熾盛光如来往臨図」はその中でも貴重な作品とされている。
ほかに「銀製金鍍金注子」は高麗時代の金属工芸品の中で最もすぐれた作品とされており、注子と承盤にはすべて花模様の支えがついている。蓮華と精巧な鳳凰、繊細な文様に金を加えて華やかに表現された作品だ。
特別展は韓国の博物館史を、帝室博物館開館時、日本統治時代など五つの時代に分けて紹介する。国立中央博物館所蔵の国宝「天馬塚・天馬図」など韓国の主要文物も公開される。
韓国初の博物館は、朝鮮朝最後の王である純宗(スンジョン)が、「名君は民とともに楽しんだ」として昌慶宮内に設置した動物園・植物園と帝室博物館を一般人に開放した1909年11月1日が始まりとされる。
しかし1910年、日本によって植民地化されると、博物館は韓国各地の文化財を収集して日本に流出させる役割も果たすようになった。
日本には韓国から流出した文化財が約3万点あるといわれている。文化財返還問題は1965年の韓日条約締結時に議題にのぼったが、結局未解決なままで終わり、いまもくすぶり続けている。
在日作家の崔碩義さんは、この問題について、「日本にある韓国文化財は、日本の人たちに韓国文化を知らせる効果もある。ただ歴史的に貴重な文化財については長期的に韓国に里帰りするとか、適当な金額での返還という方法が取れないだろうか」と提案している。