韓哲文化財団(韓昌祐理事長=マルハン会長)の第3回助成金伝達式(2008年度)が13日、マルハン本社(東京都千代田区)で開かれた。今年は学術・文化・スポーツ・福祉などの分野から10人に助成金が伝達された。
韓昌祐(ハン・チャンウ)理事長は、「16歳の時に事故で亡くなった長男の名前『韓哲』を財団名にした。韓哲文化財団の前身は韓国文化研究振興財団で、学術研究が中心だった。財団の再スタートにあたり、学術研究だけでなく文化・芸術・スポーツ・福祉などに対象を広げることで、わかりやすく楽しい財団にしたいと考えた」とあいさつした。
池坊保子・衆議院議員は、「財団が続く限り、『韓哲』さんの夢と心は生き続けると思う。助成金対象者も今後の業績が期待される人たちなので楽しみ」と述べた。
姜基洪(カン・ギホン)・韓国文化院院長は、「文化交流こそが韓日をつなぐ懸け橋になる。韓哲文化財団の役割と発展を期待したい」と話した。白眞勲(はく・しんくん)・参議院議員は、「多くの在日が運命を切り開くために必死に生きている。その中で財団が生まれ、韓日友好の道を歩んでいる。きょうの受賞者は新しい未来をつくるためにがんばってほしい」と語った。
次に助成金伝達式が行われ、韓昌祐理事長がそれぞれに手渡した。
「平成の朝鮮通信使 日韓友情ウォーク」を開催し、ソウルから東京まで約1000㌔を両国の市民でウォーキングしながら平和と友情を訴える日本ウォーキング協会は、村山友宏会長が病欠のため、同会会員が代理出席。「今年4月から第2次ウォークを行い、平和と友好を広めていきたい」と語った。
93年に渡仏し、2001年にフランス国家認定のプロ俳優として認められた趙永壽(チョ・ヨンス)さんは、仕事のため姉が代理出席し、「受賞を励みに、在日コリアンとして日本でも知られるよう弟が頑張ってくれることを願っている」と話した。
日本国内の児童擁護施設で演奏し、子どもたちに生きる希望や勇気を与える活動を行っている男性4人のボーカル・グループ「VOXRAY」の清永大心(きよなが・ともみ)さんは、「日本だけでなく韓国の養護施設も訪問して、歌で元気づけたい。その費用に助成金を使う予定。音楽を通して日韓交流に貢献したい」と語った。
兵庫を拠点に、介護が必要な在日コリアン高齢者などに居宅介護サービスなどの福祉事業を展開し、福祉を通じた国際交流に取り組む康永洙(カン・ヨンス)さんは、「2004年に介護事業所アリランはんしんをオープンし、この5年間で350人の在日高齢者を支援してきた。今後も在日高齢者のためにがんばりたい」と述べた。
戸田郁子さんは、中国朝鮮族の移住と定着の歴史、現在の生活に至るまでを、聞き取り調査を中心に行っている研究者。「朝鮮族の足跡を一冊の本に残すため、助成金を活用していく。韓哲文化財団の名に恥じぬよう努力し、必ず出版したい」とあいさつした。
東京フィルハーモニー交響楽団の首席ファゴット奏者、崔栄津(チェ・ヨンジン)さんは、演奏会のために夫人が代理出席。「ファゴットは欧州ではソロ楽器として確立している。韓日でファゴットのソロ演奏会を実現し、韓日の音楽交流、そして韓国の音楽教育の底上げのため夫にがんばってほしいと願っている」と述べた。
アジアのシャーマンを撮影し続け3年前に急逝した韓国人カメラマン、故金秀男(キム・スナム)氏の写真展を企画している実行委員会代表の杉浦康平さんは、病気のため同実行委メンバーが代理出席。「金秀男さんの作品を通して、韓国、そしてアジアのシャーマニズムの世界を知ってほしい。韓国文化院との共催で10月に開催予定」と話した。
障害を持つ子どもの親の会「ムジゲ(虹の意)の会」の申桃順(シン・ドスン)さんは、「20年ほど前、自分の子どもが障害を持って生まれたのがきっかけで、互いに励ましあえればと親の会を結成した。健常者も障害者も人生を楽しく歩める社会にしたい」とあいさつした。
ドキュメント映画『チベットチベット』が話題となった映画監督の金昇龍(キム・スンヨン)さんは、「日系ペルー人のコミュニティー、そしてペルーで暮らす日系人の社会を探る映画を制作中。彼らの姿を通して韓国から日本に来た1世の姿を浮かび上がらせ、日本社会が在日韓国人を見つめ直すきっかけにしたい」と話した。
豊臣秀吉の朝鮮侵略をテーマに、過去の歴史の過ちを凝視することで日韓の未来のあり方を考えようとするドキュメンタリー映画『耳塚』を制作中の映画監督、前田憲二さんは、「今回の助成金をはじめ、多くの人の支援を受けて、3年間撮影してきた映画が完成に近づいている。今後も支援をお願いしたい」とあいさつした。
財団は09年度から事務所を京都から東京に移し、活動の幅を広げていく。また池坊保子・衆議院議員が理事に復帰する。