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2009/09/18

<在日社会>在日高齢者10万人超・介護問題に早期取り組みを

  • 在日高齢者10万人超・介護問題に早期取り組みを

    在日高齢者への対応が急がれる

 在日高齢者は2008年現在(法務省)で10万214人となり、10万人を超えた。在日高齢者への早期対応が課題となっている。

 2008年末の在日韓国・朝鮮人は58万9239人、高齢者は男性4万2464人、女性5万7750人の総計10万214人で、高齢化率は17%にまでなった。

 在日密集地の一つ、東京都足立区には、在日向けにデイサービスを行う施設が2カ所ある。地域の在日社会の要望を受けて数年前から始めたものだが、年々利用者が増えているという。

 その2カ所でホームヘルパーとして従事する在日3世の女性は、「在日1世で認知症となった高齢者の場合、母語である韓国語しか話さなくなり、(韓国語がわからない)家族やヘルパーが話を理解できないのが問題で、日本の介護施設から相談が来る。在日でも韓国語がわかるヘルパーは限られているので、バイリンガルのヘルパー養成が大切」と強調する。

 「在日向け施設が関東地域で増えることが重要」と関係者は話す。

 兵庫県西宮市の「アリランはんしん」は、在日高齢者問題に対応するため2004年に発足した介護事業所。現在デイサービスを市内2カ所で行っている。契約者は現在80人ほどで、訪問介護を入れて100人になる。

 ここでも、韓国語しか話さなくなった在日高齢者への対応、日本の施設からの受け入れ相談が増えているという。

 アリランはんしんがデイサービス2号店として、昨年12月に始めたのが宅老所の運営だ。宅老所とは、高齢者ができる限り住み慣れた地域で生活できるよう、介護保険制度では手の届かないサービスを提供する民間の施設のこと。民間の家屋などを改修してサービスを行うので、費用がかからないのが利点だ。現在日本には200~300カ所あり、在日向けはアリランはんしんが運営する1カ所だけだ。

 康永洙(カン・ヨンス)理事長は、「介護保険対象外となる午後3時半以降のデイサービスの実施、一日宿泊も行っており、在日高齢者を抱える家族に大変喜んでもらっている・宅老所は施設の費用が割安なので、在日向けの建設を各地で考えてもらいたい」と強調する。

 在日高齢者は行政サービスから長年阻害されてきた。いまも無年金問題は解決していない。

 「在日全体で、在日高齢者の現状把握と介護問題の取り組みを研究するとともに、多民族社会に適応した福祉政策を日本社会に求めていってほしい」と、介護関係者は訴える。