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2009/07/10

<在日社会>在日2世の歌手、朴保・在日の生き様歌い30年

  • 在日2世の歌手、朴保・在日の生き様歌い30年

          熱唱する朴保  撮影・ヒデ増田

 韓国人の父と日本人の母を持つ在日2世の歌手、朴保(パクポ)が今年、デビューから30周年を迎えた。彼の活動を追ったドキュメンタリー映画『Pak―Poe 朴保』が11日から東京・渋谷のUPLINKで公開され、30周年記念アルバム『架橋~未来へ/朴保バンド』も近日発売される。歌に託した思いを聞いた。

 在日の傷痍軍人の半生を歌った「傷痍軍人の唄」など、在日の生き様から、平和、環境、多民族共生などをテーマに歌い続ける朴保(54)は、山梨県出身の在日2世。

 10歳の時、兄に誘われバンドを始める。歌唱力に注目したレコード会社にスカウトされ、79年「広瀬友剛」という名前でデビュー。しかし翌年、「朴保」を名乗ることを決意する。

 「本名を名乗りたい思いがあった。韓国の民族音楽に出会い、また韓国の音楽家と知り合う中で、ルーツを明らかにしようと決心した。レコード会社には反対され、干されることになったが、決意は揺らがなかった」

 83年に単身渡米、ロックバンドを結成し、ネバダ核兵器地下実験場でライブを行うなど、反核・反原発の願いを歌に託した。

 「米国ではメッセージ性ある音楽がメジャーになることを知った。ネイティブアメリカンを支援する活動にも参加して、学ぶことが多かった」

 10年近い米国生活を終えて92年に帰国。日本で歌手活動を再開した。朴保バンドを結成してライブ活動を行う一方、韓国の人気歌手・嚴仁浩(オム・インホ)と共同アルバム『朴保&嚴仁浩/時は流れる』を発表、好評を博した。

 ライブハウスはもちろん、ワンコリアフェスティバル、平和集会、日本の学校の課外授業、そして韓国にも招かれ、歌い続けている。

 「30年間歌手を続けて、やっと認められたかなと思う。メッセージソングだけでなく、自身の内面をどう音楽表現していくか、改めてスタート地点に立った気がする。在日の若者には、こんな生き方をしている男がいると知ってほしい」

 記念アルバムには統一を願った『リムジン江』、そして新曲『橋』を収録している。

 「韓国と日本、南と北、その間に橋をかけたい。そのための土台になりたいと願って『橋』を作った。民族や国境の壁を越える日が来ることを願っている」

 映画『Pak―Poe 朴保』は、社会問題を撮り続けてきた田中幸夫監督が90年代後半から撮影を開始、10年以上かけて完成させた。

 「ストレートなメッセージが歌と一体になった彼の音楽性の高さを、広く知らしめたいとの思いから映画制作を決意した。壁を越えること。国と国、血と血、人と人。自らの心を解放して、他者とつながること。それを可能にするのは文化である。朴保の歌と生き方に、それをみてほしい」と話す。

 11日の上映前、朴保バンドのミニライブも行われる。http://www.pakpoe.com