在日韓国人が多く住む京都市南区の東九条地域を、多文化共生の街にしようと、市民団体「京都・東九条CANフォーラム」の設立総会が10日、特別養護老人ホーム「故郷の家・京都」で開かれた。総会にはフォーラムのメンバーや地元住民など約80人が参加。今後のプログラムを話し合った。
同フォーラムは東九条地域を、歴史と特性を生かしながら活性化させようと、2008年2月に準備委員会を設立。人口が減少し、高齢化が進んで活気が失われつつある現状と課題などについて討論し、今回の設立に至ったものだ。
CANフォーラムの「CAN」は「コミュニティー・アクション・ネットワーク」の略で、様々な団体が多文化共生のため、ネットワーク作りを目指すことを願い名付けた。代表には朴実・東九条マダン(広場の意)代表(パク・シル、64)を選出した。活動の大きな柱として、識字・日本語教育のプログラムづくりを民間と行政の協同によって行う「多文化共生コミュニティーセンター(仮称)」の設立準備を進めることを確認。
さらに在住外国人の生活支援ネットワークつくり、識字・日本語学習や被差別部落問題などについての学習会を開いていくことなどを決議した。
第1回目の取り組みとして、6月から「多文化共生のまちづくりを考える連続市民学習会」を開催する。
総会後には、朴実代表、市民団体関係者、大学教員らによるシンポジウムが開かれ、東九条の歴史、同じく在日密集地の大阪・生野区、コリアタウン作りを進める東京・新大久保などの現状と課題が報告された。
朴実さんは、「東九条地域は40年前の高度成長時代は廃品回収業を営む在日が多かったが、事故や火災などが多発していた。最近はマンションなども出来てバラックは減ったが、一方で人口減、少子高齢化が進み、活気が失われている。在日問題はもちろん、被差別部落、高齢者、障害者問題などについて、各団体や市民と連携しながら活動し、多文化共生のまちづくりをしたい」と話す。
東九条の人口は約1万7000人、外国籍は約3000人で、そのほとんど在日韓国・朝鮮人になる。ダブルの子たちも含めると在日はさらに増えると見られ、特に東九条の東側地域は、在日の人口比率が5割近いという。1920年代、土木工事に携わった韓国人が同地域に多数住むようになった。被差別部落出身者や障害者が公営住宅等に多く住んでいる地域でもある。
朴実さんは1944年同地域に生まれた在日2世。71年日本人との結婚を機に帰化して日本国籍となる。87年、帰化時に強制された「日本的氏名」から民族名を取り戻す。多民族共生を願い、93年に「第1回東九条マダン」を開催した。今年11月3日に第17回を開催予定だ。