若者たちの雇用不安が、韓日はじめ世界各国で社会問題化している。そんな中、非正規職労働者の国際交流を活発化して雇用不安、格差社会に対応していこうとする動きが出ている。近ごろ韓国の若者たちを取材して「怒りのソウル 日本以上の『格差社会』を生きる韓国」を出した作家の雨宮処凛さんに話を聞いた。
日本は3人に1人が非正規雇用といわれて社会問題化しているが、韓国はそれ以上、2人に1人が非正規雇用であり、OECD(経済開発協力機構)諸国中、第1位の非正規雇用率とされる。
正社員になれない韓国の20代は、「88万ウオン世代」と呼ばれている。イタリアでも「1000ユーロ世代」と呼ばれる「学歴はそこそこでも正社員になれないワーキングプアな若者」が社会問題化しており、フランスなどでも改善されない若者の雇用に、怒りが巻き起こっている。
産業構造のグローバル化が進む中、若者の就職難は世界的な問題として表面化している。
格差社会、若者が生きにくい社会構造の変革について積極的に発言を行っている雨宮さんは、「労働運動/生存運動」=プレカリアート(非正規雇用者および失業者を総称する言葉、イタリア語で不安定のプレカリオと無産階級のプロレタリアートを組み合わせた造語)運動に取り組み、プレカリアート国際交流の第1歩として、昨年韓国を訪問した。
「日本以上に若者が雇用問題に直面していると聞き、ぜひ交流したかった。またこの間、国際集会などで韓国の代表と話す機会があり、そのエネルギーに共感を覚えた。88万ウォン世代とは韓国で2007年に発売されてベストセラーになった本のタイトル。日本円にして8万8000円(当時)の平均賃金で暮らす若者たちのことだ。大学進学率が80%を超える国なのに、卒業しても多くの若者が正規雇用につけない。公務員を目指し何年も勉強する若者、雇用を打ち切られ、ハンスト中の女性たちなどと会ったが、日本以上に厳しいし、日本も近い将来、韓国のようになるのではないかと感じた」
雨宮さんは、88万ウォン世代の著者、禹ソクフンさんとも会い、意見交換した。禹さんは、「いまの若者の現状を知ってもらい、若者同士の団結を訴えたかった。韓国では心を病む10~20代の若者が増えている。社会構造、経済構造をどう変えるかは緊急の課題」と雨宮さんに語り、雨宮さんの連帯の呼びかけに賛同したという。
「韓国は日本以上に親の子どもへの期待が高く、それゆえ(親に申し訳ないと)心を病む若者も出ている。一方、労働運動は日本以上に盛んだ。お互いの経験を話し合うことで、意義ある連帯ができると感じた」と雨宮さんは話す。
ほかにも厳しい雇用調整にさらされる外国人労働者、「ペクス(白い手)」と呼ばれるニートの青年、兵役を拒否して懲役刑を受けた若者らと交流を重ねた。
「欧州などの経験に学びながら、生存のためのノウハウ、福祉、多重債務、住居などについて話し合い、韓日の国境を超えた『貧乏人連帯』を進めたい。政府と企業は若者の雇用と教育に積極的に取り組んでほしい。若者たちが未来に希望を持てない国が、良くなるはずがないのだから。在日の若者とも連携していきたい」と、雨宮さんは強調する。
早ければ5月にも韓日の非正規雇用の若者交流を計画しており、韓日で参加を呼びかけていく。