在日韓国系金融機関の中央商銀信用組合(本店・神奈川県横浜市、洪采植/ホン・ジェシク理事長)は4月24日、同信組本店営業部の元出納主任の男性(35)が、2006年5月から事件が発覚する2008年9月までの2年5カ月間にかけて、出納係の金庫室に保管していた現金計4億9000万円を横領した疑いがあると発表した。元主任は金庫室の現金を管理する立場にあり、客からの入金額の一部や、非常時用に別に保管していた現金などを、1回あたり1000万円ほど持ち出したという。
元主任が抜き取りを行っていた2年5カ月の間に、2回の抜き打ち監査が行われたが、元主任は監査直前にコンピューターで現金管理帳簿を改ざんして証拠隠滅を図ったため、信組側は気づかなかったという。2008年9月、元主任が休暇中に3回目の監査を行い、発覚したものだ。信組内部の事情聴取に対し元主任は、「約4億9000万円を持ち出し、競馬で使った」と、容疑を認めたという。
同信組は昨年12月11日付けで元主任を懲戒解雇するとともに、神奈川県警に被害届を出した。同県警は業務上横領容疑で現在捜査を進めている。
これについて関東財務局長は4月24日、同信組に対し、内部管理態勢に重大な問題があるとして、①法令等遵守及び適切な経営管理態勢の確立に向けた経営姿勢の明確化②経営陣の率先垂範による役職員の法令遵守態勢の確立③理事会等の適切な機能発揮による経営管理態勢の確立④営業店における厳正な事務処理の徹底と相互牽制機能の抜本的な見直し⑤内部監査機能の充実・強化による監査の実効性の確保⑥適切な人事管理の実施、の6項目の業務改善命令を出した。
5月25日までに業務改善計画を提出し、以後、改善計画の実施完了までの間、その実施状況を3カ月ごとに報告することを同信組に求めている。
同信組は改善命令を受け、「不祥事件の再発防止ならびに役職員の法令等遵守意識の再徹底、適切な経営管理態勢の確立に全力で取り組んでいく」と発表した。
■解 説■
同信組は1962年に横浜商銀として発足し、2007年12月には北陸商銀と合併した。現在は神奈川、静岡、茨木、千葉、福井、富山、石川の7県に14店舗を持ち、2009年3月現在で組合員数1万8820人、預金量約989億円になる。金融機関の厳しい経営が続く中、在日系信用組合も生き残りを賭け、合併を進めてきた。同信組も組合員に対し7割減資を断行し、生き残りを図ってきた。それだけに今回の不祥事件発生に、「これでは安心して預金できない」「理事長以下、交代を含めて経営陣は猛省してほしい」などの厳しい声が寄せられている。
今回の事件は、2年5カ月もの間不正が放置されていた驚くべき出来事であり、極めてずさんな管理態勢が露呈したことに、関東財務局、組合員共々警鐘を鳴らしていることを、中央商銀は真摯に受け止め、信頼回復に努めてほしい。