韓国の独立運動家の弁護などに携わった人権弁護士、布施辰治の生涯を描いたドキュメンタリー映画「弁護士 布施辰治」が、このほど完成した。きょう28日に都内で完成上映会が開催され、今後日本各地で上映される。また韓国でも夏に公開予定だ。
布施辰治(1880~1953)は宮城県石巻出身で、明治法律学校(現・明治大学)卒業の弁護士・社会運動家である。日本の明治末期から戦後にかけて、社会運動や労働運動、韓国独立運動などで弾圧された人々の人権を守るため、積極的な活動を続けた。
「世の中に一人だって見殺しにされていい人はいない」との信念を持ち、社会正義のための行動を擁護し、日本の植民地となった韓国の人たちの生存と自由のために命をかけた。関東大震災時の韓国人虐殺事件では、家に逃げ込んだ韓国人を命がけでかくまった。
それらの功績が認められ、日本人として初めて韓国政府から独立に寄与した愛国の士に贈られる「建国勲章」を2004年に授与された。「日本のシンドラー」と韓国では呼ばれている。
ロケは出身地の石巻市をはじめ、韓国でも行われた。韓国では俳優、弁護士などが手弁当でロケに協力した。俳優の赤塚真人さんが布施を演じ、俳優の中村雅俊さんらが朗読を担当している。
21日に行われた記者会見で、池田博穂監督は、「布施辰治の人類愛、社会正義の精神を伝えたい。そして韓日の草の根的な友好に寄与したい」とあいさつした。
布施辰治に裁判で弁護をしてもらった経験のある辛昌錫(シン・チャンソク)さんは、「韓国人が人間として扱われなかった時代に、布施先生は同じ人間として弁護してくれた。その時の感動はいまも忘れられない。上映運動が広まることを願っている」と語った。
28日の東京・なかのZEROホールを皮切りに、6月4日に石巻市・岡田劇場、9日に仙台市・仙台弁護士会館、14日と18日に大阪の伊藤塾・法学館憲法研究所、7月2日と3日に東京のYMCAアジア青少年センターで完成記念上映会が行われる。問い合わせは「弁護士 布施辰治」製作委員会℡03・5840・9361へ。
布施辰治の孫の大石進さんが、「弁護士 布施辰治」(西田書店)を出版した。布施辰治の生い立ちから刑事弁護士へ、自己革命から自身の受難へ、植民地の民との共闘、関東大震災での奮闘、戦後弁護士活動再開などの章で構成され、「負けを覚悟で全力で弱者とともに闘い 救い得なかった死刑囚の菩提を弔うことを自らの使命とした」祖父への愛情を込めた書となっている。