在日3世の高亜希さん(コウ・アキ、大阪・生野区)は、地域に密着した病児保育事業を2月に開始してから4カ月。子育てと仕事を両立させる女性たちの味方として、申し込みが急増している。
「仕事と子育ての両立」は、働く女性にとって、昔も今も大きな悩みだ。保育所の数が足りず子どもを預けられないため働けない女性もいる。また、子どもが急に病気になっても仕事を休めず、途方にくれる女性もいる。また、最近は男性の子育ても増えている。そんな保護者のために、病児・病後児の保育を行うNPO法人「ノーベル」を設立したのが、在日3世の高亜希さんだ。
在日密集地に生まれ、幼い時から本名で生活していた高さん。
「小学校も半数近くが在日の生徒なので、在日であることに違和感はなかった」
大学卒業後、旅行代理店、広告代理店に勤務するが、女性の同僚や先輩たちが、結婚や出産を機に退職していくのをみて、「女性が働きながら子育てもするのは無理なのか。社会や行政が二者択一しなくてすむシステム作りをできないのか」と疑問に思った。
また一方で、「自分は韓国人として生きるのか、日本人として生きるのか」と在日のアイデンティティーに悩み続けた。そして2007年、会社をやめて韓国に語学留学する。韓国社会に実際に触れる中で、「国籍に束縛されることなく、自分が生まれ育った地で社会に役立つ活動をしよう。それが在日の生き方につながる」と決意した。
日本に戻ってから、病児保育について調査。普通の保育事業と違って定期収入が見込めず、経営的に大変なことを知るが、病児保育に取り組むNPO法人「フローレンス」があることを知り、東京で1年間研修を受ける。そして大阪に戻り、フローレンスの支援と、大阪府と市が営む「大阪地域創造ファンド」の助成を受けて、今年2月に大阪市内の2区でサービスを始めた。開始直後から問い合わせが殺到し、7月からさらに4区を追加することになった。
現在、本部スタッフが高さんを含め3人、保育スタッフ7人の10人で運営している。
「私自身はまだ未婚だが、いつか結婚して子どもが出来たとき、仕事と子育てが両立できる社会であってほしい。また地域の人々が住みやすい街、助け合いの連鎖をつくりたい」