韓国初の男性ファッションデザイナーで、世界的に活躍したアンドレ・キムさんが12日午後7時25分、肺炎のため入院していたソウル大学病院で亡くなった。75歳だった。常に白い衣装を身に付け、その理由として「日本の川端康成の雪国を読んで、白の純粋な美しさに感動したからだ」と生前語っていた。
アンドレ・キムさんは本名が金鳳男(キム・ボンナム)。「アン先生」と呼ばれ、独特な化粧と声、純白の衣装がトレードマークだった。韓服をモチーフに原色を多用したファッションで多くの人に親しまれた。88年ソウル五輪で韓国人選手団のユニフォームをデザイン。また各界の著名人や芸能人の衣装を数多くデザインした。
さらにスポーツ界のスターたちに、自らがデザインした衣装を着せてファッション・モデルとしてステージに立たせ、希望するスポーツ選手が殺到したともいわれる。
李承燁選手(イ・スンヨプ/現在は日本の巨人軍所属)もアンドレ・キムさんの衣装でファッションショーに出演したことがある。アン先生の衣装を身に着けることが一流の証明と言われるほど、ファッション界で影響力を及ぼしたカリスマ的人物だった。
アンドレ・キムさんは1935年、ソウルの農家の家庭に生まれた。外国の映画と雑誌を見てデザイナーにあこがれ、高校卒業後、1961年、国際服装学院に第1期生として入学。翌62年に韓国初の男性ファッションデザイナーとしてデビュー。66年にはフランスのパリでファッションショーを開催し、世界デビューを果たした。
これまで数百回のファッションショーを世界各国で行い、その中には96年、エジプト政府の招請を受けてピラミッド前で世界で初めて行った独創的な野外ファッションショーもある。
77年ファッションデザイナーで初めて大韓民国文化勲章を受章。また2000年にフランス芸術文化勲章も受章している。また00年12月国連児童基金(ユニセフ)の特別代表に任命されるなど、平和活動、慈善活動にも熱心だった。
日本でも評価が高く、白い衣装のきっかけとなった「雪国」の著者、川端康成氏もアンドレ・キムのファッションショーを高く評価した。漫画サザエさんの登場人物、磯野カツオに似ていることから「カツオ」と親しみを込めて呼ぶ日本のファッション関係者も多い。
在日3世のファッションデザイナー韓安順(ハン・アンスン)さんは、「数年前に釜山コレクションに招請されたが、ラストの特別発表者がアンドレ・キムさんだった。別格な存在だった」と振り返る。
韓国政府は13日、アンドレ・キムさんの業績を称え、韓国文化勲章で最も等級の高い「金冠勲章」を贈ることを決定した。