国際ペン東京大会が都内で開かれ、関連行事の一環として記念講演と対談「韓国文学の現在」が9月25日に早稲田の小野梓記念講堂で開かれた。韓国の著名な女性作家、孔枝泳(コン・ジヨン)さんと文芸評論家の尹相仁(ユン・サンイン)さんが、同タイトルで講演し、社会に果たす文学の役割について語った。
孔枝泳さんは1963年韓国ソウル生まれ。延世大学英文科卒後、労働運動を体験した。民主化運動で収監されたことがあり、その経験を反映した短編小説「日の上る夜明け」で88年作家デビューした。死刑囚をテーマにした「私たちの幸せな時間」が評判となり、386世代を代表する女性作家として知られる。
孔さんは講演で、「韓国は97年の経済危機で、明日は今日より悪くなるかもしれない恐怖を感じながら生きるようになった。同年末に23人の死刑囚がまとめて死刑執行されたのを知り、死、人生、罪と罰をテーマに小説を書こうと考えた。『私たちの幸せな時間』が大きな反響を呼び、韓国で死刑問題を考えるきっかけとなったことを誇りに思っている」と語り、「人はみな悪の部分を持っている。犯罪者を作り出すか作り出さないかは社会の問題だ」と強調した。
さらに、「韓国は非正規職が増えているが、仕事が安定しないと精神も破壊される。自殺が増えているが、防げる死は防がないといけない。人を生かす文学、正義と愛を共感できる文学を私は目指したい」と語った。
文芸評論家の尹相仁さんは、「孔さんの作品は赦しがテーマといえる。世界にはいまだに多くの暴力があるが、人を救うための文学の役割について、韓日で語り合い、交流を深められれば」と述べた。