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2010/11/05

<在日社会>日本に流出韓国文化財・返還の動きが加速

  • 日本に流出韓国文化財・返還の動きが加速

            韓国国立中央博物館に寄贈された「甘露図」

 日本に流出した韓国文化財返還の動きが加速している。宮内庁が保管している朝鮮王室儀軌は年内にも返還される見込みだ。大倉文化財団が保管している利川五層(五重)石塔についても、同財団は返還に前向きな姿勢を示した。一方、韓国国立中央博物館に、京都の龍岸寺住職、江島孝導さんが朝鮮朝前期(16世紀)に製作された大型仏画「甘露図」を寄贈したことが明らかになった。

 植民地時代に韓国から日本に持ち出され、現在は宮内庁が保管している朝鮮王室儀軌(朝鮮王朝時代に行われた祭礼や主要行事について絵や文で記録した書物)の早期返還について、韓日両政府の協議が進められている。

 朝鮮王室儀軌は、すでに日本政府が8月、韓日併合100年にあたって発表した談話の中で早期返還を表明し、後は具体的時期の問題だけとなっていた。早ければ年内にも返還される見込みだ。

 また、同じく植民地時代に日本に持ち出され、現在は大倉文化財団が保管している「利川五層(五重)石塔」についても、大倉文化財団が、返還の意向を表明した。

 同石塔の返還推進委員会がこのほど、大倉文化財団と交渉を行った際、財団側から、「石塔は文化財として日本の文化財政策の影響下にあるので、日本政府が容認すれば韓国に返還したい」と述べたもの。

 「今後、朝鮮王室儀軌と利川五層石塔が同時に返還される可能性もある」と関係者は話す。

 今日、国立中央博物館に今回寄贈された仏画「甘露図」は、釈迦の十大弟子の1人である目連が、餓鬼道に没落した亡き母を救済する儀式を行う姿を描いたもの。

 韓国に現存する「甘露図」は、宝石寺の「甘露図(1649年作、国立中央博物館所蔵)が最古とされるが、それよりも古い時期に描かれており、今後、国宝に指定される可能性があるほど貴重な仏画だ。

 住職の江島さんは、この仏画が韓国で製作された文化財であると知り、韓国に返還することに意味があると考え決意した。

 同博物館の関係者は、「日本に流出した韓国文化財が自発的に返還されたことは大きな意味がある」と話す。

 同仏画は来年、特別展で披露される予定だ。