市民の力で設立・運営されている高麗博物館(東京・新宿区、山田貞夫理事長)が、12月に開館10周年を迎える。同博物館は、日本とコリア(韓国・朝鮮)の友好を深め、民族差別のない共生社会の実現を目指して運営。10周年を記念して特別企画展、講演会など多彩なプログラムが予定されている。
同博物館は1990年秋、東京都稲城市の市民有志が日本とコリアの交流を学ぶ博物館を自分たちの手で作ろうと、運動を始めたのがきっかけ。
以後11年間、開館へ向けて勉強会、資金集めなどの活動を行い、01年12月7日に「高麗博物館」が開館した。
そして、①日本とコリア相互の歴史・文化を学び理解して、友好を深める②植民地支配の罪責を反省し、日本とコリアの和解を目指す③在日韓国朝鮮人の生活と権利の確立を願い、民族差別のない共生社会の実現を目指すという、三つの目的を実現するために活動などを続けている。
5月には韓国・建国大で文化財返還問題の企画展、また夏には「焼肉・キムチ大好き!在日の食文化と日本」などの展示も行った。東日本大震災では、交流のあった宮城県の女川中学校に募金を届ける活動も行っている。そして力を入れているのが在日100年に関する特別企画展で、現在「在日1世の証言」展を行っている。
山田貞夫理事長は、「昨年から今春にかけて在日100年の企画展を行ったが、戦後補償、在日高齢者の無年金問題などまだまだ課題が残されている。共生社会実現へ今後も在日100年展を続けていく」と話す。
現在会員が800人、ボランティアスタッフが80人おり、1カ月に約300人が訪れるが、問題は資金難だ。
「事務所費の支援を受けているが、それでも赤字。年会費5000円の会員を2000人に増やしたい。多くの人に支援をお願いしたい」と山田理事長は話す。
高麗博物館開館10周年記念イベントを来年1月15日と2月18日に都内で開催し、宋富子・同博物館名誉館長と姜尚中・東大教授の講演、韓国伝統芸能公演などを行う。
「記念イベントを博物館の新たな飛躍への一歩としたい」と山田理事長は強調する。℡03・5272・3510。