在日の苦難の歴史と韓日の現代史を描き出した韓日合作演劇「焼肉ドラゴン」(鄭義信/チョン・ウィシン作)が東京・初台の新国立劇場で再演されて好評を博している。11日には作・演出の鄭さんを囲んでトークが行われた。
同演劇は2008年に韓日両国で上演され、同年の主要演劇賞を総なめにした傑作。万国博覧会が開催された1970年の関西を舞台に、高度経済成長に浮かれる時代の片隅で、焼肉屋「焼肉ドラゴン」を営む夫婦と娘たちの日常から、家族愛、夫婦愛、人の生きる意味を問いかけている。
11日の上演後には、作・演出の鄭義信さんと新国立劇場の宮田慶子演劇芸術監督、鄭さんと親交のある映画監督の李闘士男(リ・トシオ)さんによるトークが行われた。
宮田監督は、「日本人から見ると、家族の結び付きがとても濃く感じるが、それが観客の共感を得たのだと思う。ラストに夫婦が旅立つシーンは、涙無しに観る事はできない」と語った。
鄭義信さんは、「(実際に国有地に住んでいて立ち退きをせまられた)父の経験にヒントを得た。在日の人たちには、とてもリアリティーを感じる場面が多いと思う。また日本社会にとって1970年は、経済成長の一方で共同体が崩れていった節目の年といえる」と語った。
李闘士男さんは、「私は大阪出身で、登場する町の風景にはリアルさを感じた。鄭さんの芝居には、『それでも人生は続く』という思いが込められている」と述べた。
鄭さんは来年、新国立劇場では第3弾となる新作を発表する。「60年代の九州の炭坑を舞台に、その片隅で美容院を営む在日韓国人の家族の物語」を予定しているという。
「焼肉ドラゴン」は20日まで新国立劇場で上演され、その後3月9日から20日までソウル・アート・センター、4月9、10日には兵庫県立芸術文化センターで上演される。関西では初上演となる。さらに4月16日、17日には北九州芸術劇場でも上演される。