韓国で在日コリアンをテーマにした映画・演劇などへの関心が高まっている。在日監督の映画を特集上映する企画が梨花女子大学校で開かれるほか、在日2世の梁英姫(ヤン・ヨンヒ)監督が北朝鮮に住む親族を撮影したドキュメンタリー映画『愛しきソナ』も公開される。演劇では鄭義信(チョン・ウィシン)作・演出の『焼肉ドラゴン』、金守珍(キム・スジン)主宰の新宿梁山泊の『TORAJI』、金満里(キム・マンリ)率いる障害者劇団「態変」の新作公演などが行われる。
梁英姫監督が、北朝鮮に暮らす兄夫婦とその娘の姿を撮影した『愛しきソナ』は、ソウル市内の映画館で上映が始まった。北の庶民生活、南北に生き別れた一家への関心などから、韓国メディアが強い関心を寄せた。4月に日本でも公開予定。
「われわれ韓日映画フェスティバル」は、10日から16日まで、梨花女子大学校内のアートハウス・モモで開かれる。
「クラシック映画の中での在日」「マスター崔洋一監督の特別展」「ルーキー松江哲明監督の全作品展」などで構成され、崔洋一(チェ・ヤンイル)監督の歴代作品、家族で帰化している新鋭の松江(柳)哲明監督のドキュメンタリー作品、それに戦後の在日を描いた大島渚監督の『絞首刑』(1968年)、小栗康平監督『泥の河』(1981年)など、25作品が上映される。金守珍主宰の「新宿梁山泊」は、ソウルの斗山アートセンターで6日まで『TORAJI』、9日~13日には世宗文化会館で『向日葵の柩』を上演する。『TORAJI』は、朝鮮時代末期の独立運動家、金玉均(キム・オッキュン)の人生を描いた作品。『向日葵の柩』は、在日の芥川賞作家、柳美里(ユ・ミリ)が91年に発表した戯曲で、在日青年のアイデンティティー探しがテーマだ。金守珍さんは、「在日同胞について理解してもらえる一助になれば」と話す。
08年に初演され韓日の主要演劇賞を独占した鄭義信作・演出の韓日合作演劇『焼肉ドラゴン』は、9日から20日までソウル芸術の殿堂で上演される。70年代の関西を舞台に、焼肉店を営むある在日一家を描き、「韓日の歴史を泣き笑いの中に描いた傑作」と評価された。韓日で再演を望む声が多く寄せられ、今回の上演となった。
劇団「態変」は、小児まひで車いす生活を送る金満里さんが設立した障害者劇団で、団員もほとんどが重度の障害者だ。
21、22日にソウルの韓国文化の家、25日に慶尚南道固城の文化体育センターで上演される『ファン・ウンド潜伏記』は、実在の独立運動家、黄熊度(ファン・ウンド)の生涯を描いた。
在日への関心が高まった背景には、釜山国際映画祭など国内主要映画祭で在日の映画が上映されたこと、サッカーの国際大会で北代表、日本代表として出場する在日選手が登場したことなどが挙げられる。
「在日作家も新世代が登場し、これまでにない映像・演劇表現をするようになった。これらの作品を通して在日への理解をより深めてほしい」と、ある在日文化人は話す。