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2011/08/05

<在日社会>浅川巧の生涯描く・「白磁の人」撮影開始

  • 浅川巧の生涯描く・「白磁の人」撮影開始

    主演の吉沢悠さん㊧とペ・スビンさん

 植民地統治下の朝鮮に1914年に渡り、朝鮮白磁や李朝時代の民芸品など伝統美術品を愛し、植民地時代の差別と闘った日本人・浅川巧と朝鮮人・李青林との友情を描く『白磁の人』(仮題)の映画発表が7月27日、浅川の故郷である山梨の県立美術館で行われた。今年は浅川の生誕120周年にあたり、「白磁の人」映画製作委員会(設立2005年1月、代表・長坂紘司)が、韓日友好の架け橋とするべく映画化を決定したもの。

 記者会見には浅川巧役の吉沢悠さん、朝鮮総督府山林課の林業試験所に勤める浅川巧の同僚の李青林を演じる韓国人俳優ペ・スビンさん、高橋伴明監督(62)、制作総指揮の長坂紘司さん、原作者の江宮隆之さんらが出席。

 長坂さんは、「クランクインするまで長かった。生誕120周年の今年、浅川を再評価する動きが日韓で高まっていることはうれしい。いい映画にしたい」と語った。

 映画『BOX 袴田事件 命とは』などの高橋伴明監督は、「韓国の人たちと協力して成功させたい。二人の友情を描きたい」と述べた。原作の江宮隆之さんは、「両国の若者達に見てほしい」と話した。

 映画『孤高のメス』のなどに出演している吉沢悠さんは、「素晴らしい作品になるよう頑張りたい」と話した。

 原作に登場する架空の人物で、巧を理解する李青林を演じるぺ・スビンさんは、韓国ドラマ『朱蒙 チュモン』『トンイ』などに出演している実力派俳優で「プレッシャーに負けず撮影に臨む」と語った。

 映画化に協力してきた在日2世の河正雄さんは、「在日の生き方を考える上でも浅川巧の人生は参考になる。在日にとっても意義ある映画になるだろう」と語った。

 同映画は先月末、韓国ロケが始まった。2012年初夏、新宿バルト9ほか全国公開される。韓国でも公開予定だ。


 ※浅川巧は1891年山梨県旧高根町生まれ。1914年朝鮮総督府農商工務部山林課に勤務。1924年に朝鮮民族美術館を開館し、朝鮮美術品の蒐集・保存・紹介に尽力する。1931年、40歳で死去。民族共生と友好を願った浅川巧の生涯は、韓国と日本の学校教科書にも掲載。91年には浅川兄弟生誕の地記念碑が山梨県旧高根町に建立され、2001年には「浅川伯教・巧兄弟資料館」がオープン。