長崎県対馬市は、東に日本列島、北に韓半島、西に中国大陸を望む位置にある。古代から文化交流が盛んで、島民は境界人としてのアイデンティティーを育んできた。最近では韓国からの観光客が急増し、韓日交流の窓口としての役割を果たしている。そして11月から対馬アートファンタジアをスタートさせる。財部能成・対馬市長に話を聞いた。
――対馬アートファンタジアを旗揚げするが。
芸術活動、特に美術や音楽は人間の真実を表現し、心を氷解させてくれる。いま世界の中心都市が、アートによって都市の再生を図り、アートを介した文化交流を行っている。最近では岡山県直島など瀬戸内の島々によって「瀬戸内国際芸術祭」が開催され、国内外から注目を集めたのが参考になった。
アートを通した多様な国際交流の場をつくり、国境を乗り越える人材を対馬から育てたい。
――具体的な作業は。
広島市立大の美術専攻の学生らに厳原町に長期滞在してもらって、韓国や中国から対馬に流れてきたペットボトルなどの漂着物を使って、みこしなどの作品を作っている。11月5日に朝鮮通信使ゆかりの自治体で作る「朝鮮通信使縁地協議会」の全国大会があるが、そこで対馬アートファンタジアを旗揚げする。
――対馬藩の宗家文書や通信使関連資料を展示する「対馬歴史海道博物館」の建設も進められているとか。
対馬には多くの歴史資料や建築物が残されている。宗家文書も7万数千点あるが、まだ解読されてはいない。解読が進めば、日韓の歴史がより明らかになるだろう。「対馬歴史海道博物館」は2016年の開館を目指している。歴史資料の保存・公開を通じて島の活性化につなげたい。
厳原町の長崎県歴史民族資料館では、江戸時代に対馬藩が韓半島南部に置いた日本人居留地「草梁倭館」を500分の1で再現した模型を展示している。これは在日3世の建築家、夫学柱さんらが取り組んでいるもので、当時の交流を知ることができる。朝鮮通信使のみならず14~15世紀の世界との交流の歴史を、今後紹介したい。
――今後の抱負を。
海でつながる利点を生かし、世界のさまざまな人々が行き交う楽しい島、多文化共生の島にしたい。