今年はベルリン五輪マラソン金メダリストの孫基禎生誕100周年になる。スポーツを通じて平和のメッセージを訴え続けてきた孫氏の生涯を再評価する動きが韓日両国で起きている。
孫基禎さんは日本植民地時代の1936年、日本代表としてベルリン五輪男子マラソンに出場して金メダルを獲得した。
当時、韓国紙が日の丸を消した表彰式の写真を掲載するなど、悲劇の歴史を象徴する英雄だった。ベルリン五輪の翌年には、「二度と陸上はやらない」との条件で日本の明治大学に入学した。
孫さんはマラソンの練習の中で、スポーツが人間の「教育」に大いに役立つことに気づき、私財を投げ打って後進の指導・教育に邁進。2002年のサッカーワールドカップ(W杯)韓日共催大会実現にも貢献した。
韓国政府は孫さんの金メダルと賞状、月桂冠を、体育史・民族史的な価値が高いとして今年、文化財に登録した。また大韓体育会は、国際オリンピック委員会ホームページに「孫さんが韓国人だった」記述を増やすよう要請、実現している。
韓国で再評価が進む中、日本でも6月9日、「故孫基禎選手生誕100周年シンポジウム」が、母校の明大で開催される。孫さんは1939年に明治大学法学部を卒業し、95年には明治大学から「特別功労賞」を受けている。同大関係者は、「明治大学と孫基禎先生の縁を振り返り、スポーツを通じた国際交流が活性化する契機になれば」と語る。孫さんの子息、正寅氏、在日の作家・柳美里さん、明大OBでプロ野球ヤクルトで活躍した広沢克己さんらが出席する。