新進の在日映画監督・プロデューサーの活躍が目立っている。在日2世の梁英姫監督(48)の作品『かぞくのくに』が「第86回キネマ旬報ベスト・テン」2012年日本映画1位に決まった。在日3世の松江哲明監督(32)、同じく在日3世の女優兼映画プロデューサーの杉野妃希(28)も新作を発表し、高い評価を得ている。
『かぞくのくに』は、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)幹部の父親の指示で、16歳のときに帰国事業で北朝鮮に渡ったソンホ(井浦新)が、病気治療のため25年ぶりに日本の家族を訪れるストーリー。70年代に北朝鮮に渡った実兄2人とその家族を10年余りにわたり撮影した梁監督の第3作となる自伝的映画で、自由の意味を問いかけた。
ソンホの妹リエを安藤サクラが演じ、同賞の主演女優賞を獲得した。同映画はまた、第67回毎日映画コンクールの脚本賞も受賞。昨年の釜山国際映画祭で上映され、今年韓国で一般公開予定。
松江哲明監督(韓国名・柳哲明)の新作、脳障害を負ったミュージシャンを描いたドキュメンタリー映画『フラッシュバックメモリーズ 3D』は第25回東京国際映画祭コンペ観客賞を受賞。現在新宿バルトほか全国公開中だ。
松江監督は日本映画学校卒業。83年に家族で日本国籍を取得した。在日のアイデンティティーを見つめたセルフ・ドキュメンタリー『あんにょんキムチ』が評判となった。
同監督初のフィクション『SAWADA』も26日から東京のオーディトリウム渋谷で公開。松江監督は多様な表現活動を追求し、インデペンデント映画の旗手として注目を集めている。
杉野妃希が主演兼プロデューサーを務めた『おだやかな日常』は、2011年3月の東日本大震災と原発事故以後を生きる女性たちの物語。
女性の視点で生命の大切さを訴えた姿勢が高く評価され、第42回ロッテルダム国際映画祭(オランダ)でも上映が決まった。
日本映画界の関係者は、「在日というマイノリティーならではの視点が3人とも英が表現に生かされている。今後も斬新な作品を作り出してほしい」と話す。