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2013/03/15

<在日社会>フィルムセンター・崔洋一監督特集 "異邦人の存在"映し出す

  • フィルムセンター 崔洋一監督特集・”異邦人の存在”映し出す①

                     崔 洋一 監督

  • フィルムセンター 崔洋一監督特集・”異邦人の存在”映し出す②

    『月はどっちに出ている』

 フィルムセンター新上映企画「自選シリーズ 現代日本の映画監督1 崔洋一」が、19日から31日まで東京・京橋のフィルムセンターで開かれる。在日コリアンのタクシー運転手を描いたコメディー『月はどっちに出ている』(93年)など12長編と、同作品短編版の計13本を上映する。崔洋一監督に話を聞いた。

 今回の特集上映は監督自選が特徴的だ。

 「上映作品を選びながら、商業性と先鋭性の両方を求めて葛藤していたことを改めて思い出した。映画監督は商業的に成功しないと次に進めない。この葛藤は映画監督なら、だれもが直面するものだ。次世代の映画監督たちに、この悩みは普遍的なものであることを知ってほしい」

 「1月に亡くなられた大島渚監督作品には、時代に対する批評性とタブーへの挑戦があった。その精神は作品を観た世界の観客・映画人に引き継がれている。同じように私の作品が、新たな刺激になればと思う」

 特集では在日をテーマにした『月はどっちに出ている』『血と骨』も上映される。

 「在日という帰属性を背負って映画を撮ったわけではない。『月はどっちに出ている』も『血と骨』も基本的に娯楽作品であり、自分が見聞きした、ある在日コリアンの姿を描いた。それが結果的に日本における異邦人の存在、アジアの近代、さまざまなものが混在するアジアが映し出された。だから観客の共感を得たのだろう」

 「『血と骨』の主人公である、巨体の金貸しで小さな町に自らの帝国を築いた金俊平のような人物は、社会が都市化する中で日本各地に存在した。またモスクワの映画祭でこの作品への評価が高かったが、それは金俊平のような人物が、家父長制の残るロシアに多数実在したからだ。映画には越境できる楽しさがある」

 若手映画人へのメッセージを。

 「ただ一言、好きにやれだ。私も再び『映画不良』になりたい。済州島4・3事件の映画などの企画を練っている。今回の特集は、自らの歩みを振り返り、新スタートを切るいいきっかけと思っている。観客の反応が楽しみだ」


日時:19~31日
場所:東京国立近代美術館フィルムセンター
料金:一般500円ほか
電話:03・5777・8600
*20日午後2時50分と30日午後2時25分より崔監督のトークイベントあり