被爆2世で現代のベートーベンと呼ばれる作曲家の佐村河内守さん(49)が曲を作り、韓国出身の世界的ピアニスト、孫ヨルム(27)さんが演奏する新曲「ピアノ・ソナタ第2番」の一部がこのほど、都内で発表された。東日本大震災の被災者に捧げる作品で、佐村河内さんは「東日本大震災を風化させないため、被災者への鎮魂の思いで作った」と話した。
佐村河内さんは1963年、被爆2世として広島に生まれた。4歳から母親によるピアノの英才教育を受けたが、35歳のときに音楽家の命ともいえる両耳の聴力を完全に失った。しかし絶対音感を頼りに作曲活動を続け、「交響曲第1番 HIROSHIMA」を完成させた。同曲は東日本大震災の被災地で、「奇跡のシンフォニー」として受け入れられた。
一方、孫ヨルムさんは2011年6月に行われた第14回チャイコフスキー国際コンクールで2位入賞し、ベスト・パフォーマンス賞も受賞した超絶技巧のピアニスト。
佐村河内さんが、震災被災者に捧げる「ピアノソナタ第2番」の制作を決意したのは、震災で親を亡くした女子小学生との出会いだ。彼女との交流を経て作った「レクイエム」を、超絶技巧を駆使した36分の「鎮魂のピアノソナタ」に発展させた。佐村河内さんは、「生者から死者へでなく、死者の思い、苦しみを生者に届ける曲として作った」と話す。
佐村河内さんは、その壮大かつ超絶技巧のピアノ・ソナタを演奏するピアニストを探し続けた。そしてチャイコフスキー国際コンクールでの卓越した演奏を見て、また彼女のCDを聴いて(直接は聴けないので、スピーカーに手を当てて振動を聴く)実力を評価した。そして「エネルギッシュな演奏と何よりも人間性が素晴らしい。彼女でないとこの曲は弾けない」と、孫ヨルムさんに曲を献呈した。
孫ヨルムさんは、「佐村河内守さんと初めてお会いした時の衝撃は、今でも忘れられない。この曲は作曲家の人生経験、そして人間の感情全てが盛り込まれていると思う。この曲を演奏することができるのはピアニストとして大変光栄」と語った。
同ピアノソナタは、9月16日に神奈川の横浜みなとみらいホール大ホールで世界初演され、以後、全国公演される。