小説『玄海灘』や紀行『日本の中の朝鮮文化』などを発表した在日1世の作家、金達寿(キムダルス)氏の業績を紹介する「金達寿 生誕100年展」が、神奈川近代文学館で開催中。在日朝鮮人としての経験を核に、作品を通して人間とはなにか、どうあるべきかを問い続けた作家だった。親交があったエッセイストの呉文子さんに同展について文章を寄せてもらった。
在日社会に転換期もたらす契機にも
昨年12月19日、神奈川近代文学館で開催されている「生誕100年 金達寿展」を大阪から上京された廣瀬陽一氏の案内で観た。観覧後、新聞や韓国テレビの取材を受けている廣瀬氏の姿を目の当たりにして、文献資料の発掘と収集に奔走していた出会いの頃がよみがえり感無量だった。
廣瀬陽一氏は、博士論文「在日コリアン文学」の始源としての金達寿文学の論稿準備から10余年、ひたすら金達寿研究に専心してきた金達寿研究の第一人者である。2016年に『金達寿とその時代』、一昨年に2冊目の評伝『日本のなかの朝鮮―金達寿伝』を前著同様「クレイン」社から上梓された。
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