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2003/11/21

<トピックス>故高円宮殿下が見た韓国 -第28回-

  • 高円宮妃殿下

                     高円宮妃殿下

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    昌徳宮入り口にある石橋の橋げたの端にある空想上の動物「ヘテ」。訪れる人が皆なでるので、ツルツルしている

◆ 昌徳宮のヘテ ◆

 昌徳宮入り口にある石橋の橋げたの端にある空想上の動物「ヘテ」。訪れる人が皆なでるので、ツルツルしたいる。(写真:上)

 今日はまた昌徳宮(チャンドックン)についてお話します。最初にガイドさんのお話を聞いたのは錦川橋(クムチョンギョ)の前でした。ここには昔、北から南に「禁川(クムチョン)」と呼ばれる小川が流れていたそうです。その小川は王宮を中と外とに分け、この流れがあることによって、中に悪魔が入らないよう防いでいたようで、王宮を訪れてくる人はここで清められることもあり、王宮はとても神聖な場所となったというわけです。

 この錦川橋はソウルに残る一番古い石橋であり、昌徳宮の中で一番古い建築物でもあります。昌徳宮は朝鮮王朝第3代の王である太宗が1405年に建てた離宮です。錦川橋以外の木造の建物は1592年の文禄の役で焼失したため、1615年に第15代王によって再建されましたが、この橋は太宗11年(1411)に建てられた当時のものです。

 橋は幅がとてもひろく正方形に近いかたちをしており、欄干には橋を守る獅子か狛犬にちょっと似た空想上の動物が置かれています。「ヘテ」と呼ばれるこの動物は善悪を見分ける能力を持ち備えており、悪には頭に生えている一本の角で襲いかかるのだそうです。このヘテは、多くの訪問者が頭を撫でていくためか(私もやりました!)、角の形跡はありませんでした。

 橋は二重のアーチになっていて、橋を支える中央の基盤石の南側にもヘテがいます。反対の北側には玄亀がいて、ヘテといっしょに川を通って入ってくる邪気を防いでいるのだそうです。とはいっても、今彼らの姿が見えるのは川の水が無いためなので、只今失業中といったところかもしれません。

 また、ヘテは火を食べるといわれ、宮殿の正門や土地の境界線などにも設置されていたようです。もともとは恐ろしい形相で橋を渡ってくる人たちに睨みをきかせていたのかもしれません。でも、写真でもお分かりいただけると思いますが、いまは年月を経てとても愛嬌があり、本人にはちょっと気の毒でしたが、宮様が写真をお撮りになった時、思わず「かわいい!」といってしまいました!

 よく考えてみると、このヘテは1411年以来、火災からこの橋をずっと守り続けているのですね。早いもので、今日で宮さまが薨去なさってちょうど1年となります。これからも韓国と日本の交流の架け橋を是非宮様にずっと見守っていただきたいと思います。(高円宮妃殿下)