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2003/10/24

<トピックス>故高円宮殿下が見た韓国 -第25回-

  • 高円宮妃殿下

                     高円宮妃殿下

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    石窟庵への入り口にある井戸。参拝者はまずここで手を清める。天然の井戸水を持ち帰る人も

◆ 石窟庵 ◆

 石窟庵への登り口にある井戸。参拝者はまずここで手を清める。天然の井戸水を持ち帰る人も(写真:上)

 この写真は石窟庵(ソックラム)のちょうど下に位置したところにあるお手水のようなものです。ガイドさんの話では、石仏は天然の井戸のうえに建っている、とのこと。参拝前のお清めをするほかに、この水を飲んでいる人も、ビンにつめて持って帰る人もいました。

 この写真でご覧になると石窟庵がどれぐらい高い位置にあるか少しお分かりいただけるのではないかと思います。ガイドさんも仏像を彫るための大きな石材をどうやってここまで運んできたのか不思議だ、と言っていました。

 中国やインドなどに見られる、自然の岩石をただくり抜いて造られたものと異なり、山の斜面を円形にくり抜き、第23回で紹介しましたように、花崗岩の石材を積み上げて石室を築き上げた構造です。

 上から見た場合、ちょうど鍵穴のような形をしております。その下の部分が前室にあたり、阿修羅や夜叉など8体のお像があり、その次のくびれた広い通路のような羨道の入り口には仁王像が、中には四天王像が守りを固めています。

 そして鍵穴の上部、丸い部分が窟室にあたります。その窟室の壁面は十一面観音像や十大羅漢像などで飾られ、これら諸仏に囲まれるように、中央に中尊釈迦如来座像が祀られています。この釈迦如来像は純白の花崗岩の座像で高さ3・4㍍の丸彫りです。昔その額に金剛石がはめ込まれていた、とどこかで読みましたが、お顔が東を向いているので、朝日に照らされるとさぞ美しかったことでしょう。

 千数百年も前に人の手によって造営されたということを考えると気が遠くなる思いがする、と宮様とお話しをしましたが、クレーンもドリルも無かった当時の人たちがどのような気持ちでこれだけの重さの石材を運び、彫ったのか、この中尊釈迦如来座像の美しく崇高な表情、優美な姿を拝見するとわかるよう気がいたします。

 日本のお寺や神社もそうですが、参道をゆっくり歩くことによって、いろいろと考え、邪念を捨てていくのかもしれません。吐含山(トハムサン)を登ると山々の向こうに東海(トンヘ)が広がっています。

 多くの方が初詣のために石窟庵に来られるそうですが、吐含山から拝む日の出は見る者に、感動を与えると共に、自然に対する畏敬の念を抱かせるのではないかと思います。人々が持ち帰るお清めの水は、その一瞬の邪念を捨てた己を振り返るために、役にたっているのでしょうか?(高円宮妃殿下)