◆ 昌徳宮の庭園・秘苑 ◆
昌徳宮の奥に広がるすばらしい庭園・秘苑。水面に浮かぶたくさんの蓮が心を落ちつかせてくれる(写真:上)
今回は昌徳宮(チャンドッグン)の奥に広がる庭園「秘苑(ピウォン)」です。朝鮮王朝時代の造園芸術の傑作といわれているこのお庭は、広大な敷地にうっそうとした森が茂り、池や小川、谷や小道などが自然に配置されたとても美しいところでした。樹齢400年を超える木が70本以上もあり、実のなる木を植えて庭園がより山にとけ込むように工夫されています。
1405年太宗(テジョン)時代に作られ、成宗(ソンジョン)時代に今のような規模に拡張された、王と王妃そして王族方が休息をおとりになった場所です。日本語で案内してくれたガイドさんから、本来「後苑(フウォン)」または「北苑(プッグォン)」と呼ばれていた、との説明を受けましたが、あとでいろいろな本や資料を読んでみますと、王族以外には立ち入りを禁止していたので「禁苑(キムォン)」ともよばれ、「秘苑」という名前が使われるようになったのは、1904年高宗時代からのようです。
この写真はガイドさんの話を私が必死に書きとめている間に宮様がお撮りになった芙蓉池(プヨンチ)と芙蓉亭(プヨンジョン)です。「天」を象徴する丸い島、「地」を象徴する四角い池、そして芙蓉亭が「人」を象徴している、とのことでした。山の緑を背景に、島には松などが植えられており、水面に浮かぶたくさんの蓮を眺めていると、とても心が落ち着く場所です。
芙蓉亭は蓮の花をイメージして、当時の木工芸の粋を集めて造られた伝統的な韓屋で、建物を支えている柱の内、北側の二本は水中に打ち込んであり、窓のところに座ると水の上にいることになります。そこからの景色を満喫しながら時間を過ごすのもきっとすばらしいものでしょうね。この芙蓉亭のちょうど向かい側の高い位置に宙合楼(ジュハンヌ)がそびえ立ち、その真下に映花堂(ヨンファダン)という建物があります。
この文章を書くにあたって、どのようにこれらが使われていたか調べたときに、自分がたいへんな勘違いをしていたことに初めて気づきました。私は「映花堂」を「宴会場」と聞き違えたため、宙合楼が宴会などを含めた接待の場、迎賓館のようなものだとばかり思い込んでいたのです。実はこの建物、一階が書庫、二階が閲覧室でした!私たちは時間の制限もあり、およそ4万5000㎡もあるこの庭園のほんの一部しか見学することができませんでした。
いつの日か、もっとゆっくり苑内を散策し、歴代の王のお好みや、建築様式の移り変わりなどを拝見しながら、秘苑でひと時を過ごしたいと思っております。(高円宮妃殿下)