◆　初夏を告げる太刀魚　◆

　美味しそうに置かれた太刀魚。高円宮殿下は、陳列の仕方に興味を持たれて撮影された（釜山チャガルチ市場）（写真：上）

　チャガルチは韓国最大の魚市場ですが、お魚だけでなく、鹿角やスッポン、唐辛子やさまざまなスパイス、日用雑貨を売っているお店も並んでいて、活気にあふれていました（一応「魚類」ということになるのかもしれませんけれども、鯛焼きを売っているお店もありました）。この写真に写っているのは太刀魚です。初夏ということもあって、このような専門店を何軒も見かけました。太刀魚の塩焼きは韓国で初夏から盛夏にかけて食卓をよく飾る魚料理だそうですが、日本でも特に九州では初夏といえば、「太刀魚が旬」といわれます。

　ところで、ここではいかにも泳いでいる時の曲線美を強調するかのように陳列してありますが、宮様はこの60㌢以上もある立派な太刀魚をご覧になって、「美味しそうだけれども、海に潜っている時に会いたくないね」とおっしゃっていらっしゃいました。確かに、この肉厚の身体に頭がつくとかなり長くなりますし、あの独特な尖った下顎と水を切るような猛烈な動きを考えると、とても怖いような気がいたします。

　話は変わりますが、韓国ではその地域によって、またその御家庭によってキムチの作り方が違うと伺っておりました。釜山のキムチも例外ではありませんでした。毎日漁にでて新鮮な漁獲類を水揚げする港なので、イカのほかに牡蛎やエイの干物などをキムチに必ず入れます。いたみやすい食材を使うためか、お味はちょっと日本の塩辛のような感じで、塩分は多いほうだと思います。

　サムスン電子の工場を訪問した時に韓国の若い主婦が欲しがるものの第１位がキムチ専用冷蔵庫だという説明を受けました。理由はキムチの匂いが他の食品に移るのを防ぐためだそうです。ＳＡＲＳの時や、ＦＩＦＡワールドカップで韓国代表チームが準決勝まで勝ち進んだ時にも、キムチパワーが話題になりました。これを機にもう少しキムチについて調べてみようかと思っております。（高円宮妃殿下）