◆ 笑う豚の顔 ◆
釜山のチャガルチ市場に無造作に置かれた豚の顔。何か笑っているような表情に親しみがもてる(写真:上)
この豚の頭の写真は釜山のチャガルチの市場でお撮りになったものです。宮様は「沖縄の市場を思い出すね」とおっしゃっていらっしゃいましたが、よく考えて見ると陳列のしかたが全く違います。この“豚たち”は笑っているように見え、何かふくよかでかわいらしいのですが、沖縄では最初から「骨抜き」になって店頭に並べてあります。時々壁にかけられている場合もあり、仮装に使うゴムのお面みたいで、ちょっと不気味かもしれません。
ソウルの南大門市場でも見ましたが、韓国では通常、顎の骨のうえに乗せて陳列するようで、そこがまたとてもおもしろいと思いました。最初はどうして頭の中にまだ骨が入っているのに台として使われているのか考えてしまいましたが、実際には注文に応じて、その場で調理してお客さんに出すこともあれば、お店でさばいて皮だけにして販売することもあるようで、その時に顎の骨が余るからなのでしょうね。
チャガルチ市場ではあまり感じなかったのですが、南大門市場では豚の頭を見たのが細い路地だったためか、「千と千尋の神隠し」を思い出してしまいました。千尋のお父さんとお母さんが神様のお食事を店先でガツガツと食べてしまうシーンですが、その幸せそうな食べっぷりと、このにこやかな豚の笑顔とがふと重なりました。
沖縄では豚は「鳴き声以外は食べる」と言われており、顔の皮(チラガー)や耳(ミミガー)はよく食卓に出てきます。韓国でも豚の耳のお料理はいただきましたが、コリコリしてとても美味でした。私は豚肉が非常に好きです。肉の淡白な甘さと、どの部分をいただいているかによって、まったく違う質感などが味わえるため、かなりこだわって楽しんでおります。韓国でも豚足を煮込んだりいろいろにお料理されたものを、たいへん興味深くまたおいしくいただきました。
ただ、もし自分で調理する場合、この写真のように、可愛くニコニコした豚をさばくのは、かわいそうであまり気が進まないかもしれませんね。今にも、ブーブーいわれそうな気がいたします。(高円宮妃殿下・写真:下)