◆ ソウルの小学校で ◆
ソウル教育大学付設初等学校を訪問したときの写真です。この学校は1953年に開校。授業研究や教材開発に積極的に取り組む伝統校としての実績には定評がある、と伺いました。私たちが訪問したのは2002年5月ですが、その時の児童数は764人で27学級ありました。
出迎えてくださったのは洪性植(ホン・ソンシク)第11代校長以下数名幹部の先生方と保護者会の役員の方々です。韓国の伝統的な衣装を着た二名の児童のうち女の子が宮様、そして男の子が私のまえに進み、お辞儀をして花を渡してくれ、またお辞儀をして下がっていきました。何ともかわいかったのが印象的でした。
明るい校舎に入ってから、まず3年生の音楽の授業を見学しました。蛙の詩を表現する、というテーマで、生徒たちはとても楽しそうに取り組んでいました。次に見学したのは4年生のコンピューター学習です。ここではFIFA ワールドカップについて好きなことを調べてまとめる作業をしていて、例えば、一人の男の子は過去のワールドカップで使われたロゴやキャラクター、他の男の子は韓国のワールドカップスタジアム、そしてある女の子は自分が好きな選手の写真プロフィールについて調べて、ホームページのようにまとめるのです。
各生徒に行き渡る数のコンピューターが設置してあり、2年生から授業を始めるそうで、コンピューターで先生が宿題を出したり、生徒が宿題を提出したりという学習方法もとっているとのことでした。
最後に見学した授業は2年生が環境問題について学習していました。教材として先生が選んでくださったのが私の書いた「氷山ルリの大航海」のハングル訳!ちょっとこそばゆい感じがいたしましたが、同時にとても嬉しく、今でも感謝しております。子供たちからの質問も受けました。「氷山が溶けたら地球はどうなってしまうのですか?」とか「本に登場するような動物は本当に存在するのですか?」など、いい質問でした。児童のほとんどが手を元気よくあげているのに全部の質問に答える時間がなかったので、「いつでも先生を通して聞いてください。お手紙で答えますから。」と言いました。(内心、連絡があることを期待していたのですが、残念ながら何も来ませんでした。)
ソウル教育大学付設初等学校を訪問することが決まった時、私はとても嬉しく思いました。子供と一緒にいるのは全般的に楽しいものですが、なかでも小学生と過ごす時間は好きです。どこの国の子も、民族、宗教を問わず、きらきら輝く瞳とこぼれるような笑顔で、自分の可能性に挑戦しています。スポンジのように何事でも吸収するあの頃の頭脳はびっくりするほどの「覚える力」をもっていますし、理解力や判断力もどんどん習得します。
手をつないでいないとどこに行ってしまうか心配な様子のあどけない低学年の児童から、責任感の芽生えた、他人のことも自分のこともしっかり考えられる高学年の姿に成長していくスピード。これには目を見張るものがあり、そこで教鞭を執っておられる先生方との出会いがその子供たちの将来のあり方を大きく変えていくものと思われます。
そのようなこともあって、小学校を訪問し、子供たちそしてその子供たちと先生との人間関係を見ているのは微笑ましくもありますが、一人の人間の成長過程でどれほど大きな一瞬を見ているかと考えると、一種の感動をも覚えます。
日本人学校との交流もあり、この日も何人かの生徒が先生に付き添われてきてくれました。次の世代を担う子供たちが、この時期にお互いを友達と呼べるようになるのは、すばらしいことだと思います。韓国と日本、隣国としての真の交流は、もしかするとこの子供たちの手に委ねられているのかもしれません。その基盤をしっかりとしたものにするように、私たち大人も心を一つにして、努めるようにしなくてはいけませんね。(高円宮妃殿下)