◆ 森林の中で ◆
木漏れ日に映える慶尚南道梁山市の森林(写真:上)
これはバードウオッチングで訪れた慶尚南道梁山市の法基水源地にある森林です。木漏れ日が、心地よいそよ風に揺れる様子がとてもさわやかで美しく、早朝に屋外にいてほんとうに良かったとつくづく思いました。
バードウオッチングといっても、夏になると鳥も子育ての時期に入り、声も姿も目立たなくしてしまいます。春から初夏にかけてはみんなとてもにぎやかですが、繁殖期を終えるともうさえずらなくなりますし、森林の新緑に守られた子育ての時期に入りますので、かなり姿をみつけるのが困難になってきます。私たちが法基水源地に行ったのは6月2日でしたから、ちょうど「声は聞こえども、姿は見えず」といった感じでした。
その良い例がセグロカッコウ。日本で見るカッコウやツツドリに色、形ともに似ているそうですが、見ることは出来ませんでした。ただし、声は聞きました。「カッカッカッコウ」と「カッ」の部分を3回繰り返して鳴いていました。セグロカッコウは日本では普通見られない夏鳥です。
日本(本州)で夏を代表する鳥といえばオオルリかもしれません。目立った高いところで朗らかにさえずる、真っ青な美しい鳥です。何人かの方に伺ったら、韓国ではオオルリもいるが、真っ黄色なコウライウグイスのさえずりが夏の到来を感じさせてくれるとのことでした。この日もよくとおる口笛のような声で鳴いていました。宮様が「ソ・ラ・ミか」と独り言のようにおっしゃって、口笛でまねをなさり、コウライウグイスが応えてくれるのを嬉しそうに聞いていらっしゃったのが、印象的でした。
今回で法基水源地を訪れたときのことを三回も書いておきながら、貯水池について一度も触れていませんでした。現地で説明を受けた時の資料によると1932年に上水道の水源確保のために建設されたもので、形式は土堰提、放流量は一日平均5000立方㍍、給水地域は釜山広域市金井区青龍・南山・老浦洞、ダムの総貯水量は150万立方㍍だそうです。一般の人の出入りを規制しているため、豊かな自然が残されていて、貯水池の周囲3㌔㍍ほどの道は鳥類や虫類の観察には理想的でした。早朝にもかかわらず、視察の機会を得ましたことを大変ありがたく思っております。
宮様がお撮りになったこの写真は当時の光の具合と森の奥行きをとても上手くとらえています。何となく、鳥の羽音や声が聞こえてくるようですよね。私がとても好きな写真のひとつです。大きく引き伸ばして飾れば、森林浴をしている気分に浸ることも可能かもしれません。(高円宮妃殿下)