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2009/03/20

<トピックス>韓日の今後100年のために                                                        駐日大韓民国特命全権大使・権哲賢氏

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    クォン・チョルヒョン 1947年釜山生まれ。延世大学政治外交学科、同行政大学院卒、筑波大学都市社会学博士取得、東亜大学教授、第15~17代国会議員、韓日議員連盟副会長兼幹事長などを経て2008年4月駐日本国大韓民国特命全権大使。

 李明博政権の発足1周年を記念したシンポジウム「今後100年の日韓関係のために」が11日、都内で開かれ、韓日の専門家らが集まり意見が交わされた。権哲賢・駐日大韓民国特命全権大使の基調講演内容を紹介する。

 私には日本と3度の縁がある。最初は筑波大学で留学生活を送ったこと、2度目は政治家として韓日議員連盟の一員として活動したこと、3度目は今このように駐日大使として活動していることだ。

 今日は①李明博大統領政権の成果と課題②韓日関係において2010年が持つ意味③韓日関係の新しい100年とその課題――に分けて講演したい。

 まず、李明博大統領政権の成果と課題について。

 韓国政府樹立60周年にあたる2008年に李明博政府は発足した。李大統領は就任挨拶で、過去60年間に韓国社会が築き上げた民主化の成果の上に韓国を先進一流国家に飛躍させたいと宣言した。「形式」よりも「実用」を強調し、国家全般で改革を行い国家の体質を変えるという信念で1年間に1700回以上も韓国の隅々を歩き回った。移動距離は12万㌔にも及ぶ。これは地球を3周した距離と同じで、ほぼ毎日、東京―名古屋(350㌔㍍)を往復したことになる。外交でも実用主義を掲げ、韓米同盟を強化しながら日本、中国、ロシアなどとの関係を強化した。特に日本との成熟したパートナーシップ関係を発展させるため、多くの努力を傾注した。李大統領は昨年、外国首脳と57回にわたり会談したが、その中でも日本との会談が一番多く6回を記録し、韓日シャトル外交が本格化した。しかし前代未聞の世界経済危機が韓国を直撃し、政府も多くの困難に直面している。そのような状況でも、李大統領は危機を飛躍する機会に変えるための努力をしている。政府は様々な角度で景気浮揚策を準備している。金利引き下げによる金融市場の安定化と、GDPの5・8%に相当する51兆ウォン規模の減税や、財政出動による景気刺激策を発表した。 一方で韓国政府は未来への準備も怠らない。公共部門の先進化、規制改革、教育改革などを進め、低炭素・緑色成長のための努力も続けている。IMFのストロスカーン総裁は、韓国が一番早く経済危機を克服すると述べたように、私も韓国が昨今の経済危機を克服し未来に大きく発展する土台を築けると確信している。

 第2の韓日関係において2010年が持つ意味。来年は日本が韓国を強制的に併合した1910年から数えてちょうど100年になる年だ。過去の不幸な歴史を克服することが、いつの時代よりも重要な課題になる。歴史問題や領土問題は、政府や国民が汗水流して築いた友好関係を一瞬にして壊してしまう敏感な問題だ。歴史と隣国に配慮しない自国中心の民族主義を愛国心と考える国家指導者により韓日・日中関係に葛藤が生じる状況を我々は数多く経験してきた。自国民を大事に思うほど隣国とその国民も大事にするという考えをもつ指導者が必要な時代になった。日本の指導者には過去の歴史を直視しながら未来に向け努力するという姿勢を持っていただきたい。今年9月に東京の日比谷公園と銀座通りで韓国文化を紹介し、韓日両国がともに楽しめるイベントを開催する。この機会に未来に向かう相互理解と信頼が両国民の心に根付くことを願っている。

 特に報道に従事している方々には感情的な対応を避け、両国民が相互理解と信頼を深めることができるような情報を伝えてほしい。たとえばフランスとドイツは15年以上もARTEという共同教養チャンネルを運営している。両国はARTEを共同運営しながら国民同士の文化的相互理解を深めるとともに、欧州統合を加速させるのに大きな役割を果たした。個人的な考えではあるが、韓日両国も共同放送局を設立し、教養・文化プログラムを共同制作して、それを世界に発信すれば、その過程で相互理解と信頼がより強くなり、アジアに対する全世界人の理解もより深まるのではないか。

 第3に韓日関係の新しい100年とその課題。これからの100年で韓国に与えられた課題は第1に、韓半島の平和と統一だ。韓国政府は米国、日本、中国などと協調関係を維持し、北朝鮮を守るのは核兵器やミサイルではなく、南北間の協力と国際社会の協力であることを主張している。非核化の過程で国際社会と共に北朝鮮を助けるための準備もできている。北朝鮮には早く南北対話に出てきてほしい。2番目の課題は、アジアを代表する民主主義国家であり先進的な市場国家である韓国と日本が地域発展をリードする使命があるということ。エベレストのような高い山を登る時に道案内をするシェルパのような役割を両国がしなければならない。このような両国の立場を「A2(Asia2)」という新しい用語で表現したらどうだろうか。さらに韓日両国に中国を加えたA3の次元にまで発展させる必要がある。両国にはFTAという課題がある。FTA交渉は農水産分野での日本の消極的な態度などで、2004年に交渉が中断されたままだ。FTAが締結されれば韓国側に年間64億㌦の貿易赤字が追加で発生するという研究もあり、昨年330億㌦の対日赤字を出した韓国にとっては大きな負担だ。このような状況下では国内産業界からFTAへの支持を集めることは大変難しい。先進経済大国の日本が大きな抱擁力を持ってFTA問題に果敢かつ柔軟な対応をしてくれることを期待する。韓日FTAが締結されれば両国経済にウィンウィン(ともに勝利)の結果をもたらし、東北アジアやアジア全域の協力と発展を促進させる触媒になり、A2を象徴する成果にもなるだろう。

 最後に韓日は善意の競争をしなければならない。未来の韓日関係の理想的なあり方として頭に浮かぶのは、フィギュアスケートの浅田真央選手と金妍兒選手の関係だ。二人が世界のトップに君臨していることは間違いのない事実で、韓日両国も両選手のように善意の競争をしながら、世界の最高レベルに関係を発展させることができればよい。私は時々、1600年に及ぶ韓日交流史の中で日本にとって韓国はどんな隣人であったのかを考える。各種の先進的な文物を伝えた古代から、通信史の派遣を通じて善隣関係を築いた近世、植民地支配と韓国戦争の経験に加え年間300億㌦超の貿易赤字が発生している現代に至るまで、韓国は日本の良い隣人であった。長い歴史の中で日本は韓国にとってどんな隣人だったか。確実に言えることは過去の100年よりも未来の100年がより重要だということ。お互いがどのような隣人になるのかを考えて実践しなければならない。