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2009/07/24

<トピックス>韓国の出版事情を聞く                                                                   大韓出版文化協会 白 錫基 会長

  • 白錫基 会長

    ベク・ソッキ 1936年ソウル生まれ。成均館大学経済学部卒。熊津出版社長、坡州出版情報産業団地事業協同組合理事などを経て、現在コンオク出版社会長、大韓出版文化協会協会会長。

 第16回東京国際ブックフェアが行われ、韓国館からも大韓出版文化協会をはじめ計13の出版、印刷会社などが出展した。後日、大韓出版文化協会の白錫基会長に韓国出版業界についてEメールインタビューした。

――日本では年間新刊数が2008年基準で約7万6000冊、年間販売部数は2008年基準で約7億5000万冊と言われています。韓国の韓国出版市場の規模を教えてください。

 2008年に韓国で発行された書籍は、大韓出版文化協会への登録を基準に4万3099冊(コミックなどを含む)、販売部数は1億651万5675部でした。そのうち日本作品(4592冊中コミック2404冊)の翻訳比率が最も高く、続いて米国(3992冊)、英国(1129冊)、フランス(820冊)、ドイツ(599冊)、中国(507冊)の順でした。

――世界的な経済不況ですが、出版業界への影響はありますか。また、不況時にどんな本が売れ、どんな本が売れなくなりますか?

 米国発金融危機による世界的な経済危機が国内の実体経済の悪化につながり、出版業界も紙価格の引き上げによる製作費の上昇といった影響を受けました。不況となり、純文学が人気を集めています。黄晳暎(ファン・ソギョン)や孔枝泳(コン・ジヨン)などの国内作家の作品が昨年に続き善戦している一方で、インターネット小説なども人気を呼びました。現在、韓国の出版物は、定価の19%まで割引が可能な図書定価制によってインターネット書店の利用者が増えています。そのため店舗型書店離れが進んでいます。大型書店だけでなく、中小の書店が共に成長できる流通チャンネルの構築をめざしています。

――最近行われた調査では「韓国民の3人に1人は1年間に1冊も本を読まない」という結果も出ています。インターネットや携帯電話、テレビなど、メディアの多様化が進み、憂慮される読書人口減少の問題や課題について、どのようにお考えですか。

 確かに紙媒体の競争力が弱まっているのは事実ですが、いくら他メディアが発展したとしても、紙の本が持つ本質的な価値に追いつくことはできません。韓国政府は昨年6月、読書文化振興基本計画を発表し、施行しています。地域や家庭、学校や職場などでの読書環境の造成などを進めています。時や場所、年齢を問わず、読書のできる環境作りのために努めています。大韓出版文化協会としても、ソウル国際図書展をはじめ、文化部などが主催する本の朗読会を後援するなど、読書キャンペーンを展開しています。

――今回、日本で行われた東京国際ブックフェアに参加した目的と成果を教えてください。

 日本の出版界と韓国の出版界は、切っても切れない関係にあります。先ほど申し上げたように、翻訳図書における日本図書が占める割合が最も高いです。東京国際ブックフェアへの参加は、こうした両国出版界の協力関係増進の良い機会となったと考えています。今後も両国の出版界が、今まで以上に前向きのビジョンを共有していきたいと思います。

――韓国では日流作家ブームと言われ、日本人作家の人気が高まっています。最近では、村上春樹さんの最新長編小説「1Q84」の韓国出版が決定したと聞いています。韓国における日本人作家作品の出版規模や現況についてお聞かせください。

 村上春樹をはじめ、奥田英朗、江國香織、東野圭吾、恩田陸、吉本ばなななどが大人気を呼んでおり、韓国で翻訳出版された日本の文学作品は、2000年代初めは年間300~400冊でしたが、06年581冊、08年839冊と急増しています。

――日本の出版業界との交流や協力、提携、ビジョンなどについてお聞かせください。

 韓日出版業界の交流には長い歴史があります。すでに日本国内では、韓国ドラマを中心にした韓流ブームが起き、韓国内では日本小説を中心にした、いわゆる「日流」に対する関心が着実に増えています。こうしたことを受け、両国の図書交流をより一層活性化させるために、今年のソウル国際図書展に日本を主賓国として招待しました。今後も両国は、より前向きな協力関係を築き、韓日の出版文化発展に寄与するでしょう。

――最後に韓国出版業界の今後の展望をお聞かせください。

 韓国の出版市場はすでに飽和状態であり、海外市場に出て、外国作品著作権輸出に向けた新たな活路を見出しています。また、完成度の高い本を発掘し、効率的なマーケティングで著作権輸出を行うことをめざし、国内出版市場がより活性化されるよう努めていきたいと思います。