韓国政府は京都議定書に続く温暖化対策の新たな枠組みをめぐり、12月にデンマークのコペンハーゲンで開かれる国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)を控え、検討を進めている2020年までの温室効果ガスの削減目標を05年比で4%削減とする見通しだ。排出削減義務のない国で、基準年と比較しての総量の削減目標を示すのは韓国が初となる。
青瓦台はこのほど、大統領直属のグリーン成長委員会を開き、既存の3つの案のうち05年比で最も目標値が低い案を除き、今月17日に決定する2020年までに排出量を05年の量に抑える「凍結案」と「4%削減案」の2つに選択肢を絞った。だが、韓国の05年基準の温室効果ガス排出量は二酸化炭素(CO2)換算で5億3800万㌧(国際エネルギー機関)となり、世界で16番目に多く、国民1人当たりのCO2排出量は11・2㌧で経済協力開発機構(OECD)加盟国中17位にあることから「4%削減案」が有力視されている。
李明博大統領もグリーン成長委員会で温室効果ガスの削減目標について、「財界では政府の目標に対し非常に不安を抱いているが、基本的に韓国の経済成長の過程に支障を与えてはいけない」との考えを示した上で、「目標はやや理想的なものを掲げ、追いかける方がよい」と考えを述べている。
他国との比較をみると、日本は20年までに90年比25%の削減目標を掲げているほか、EU同20%、米国同7%、英国に至っては34%を掲げており、これらと比べると韓国の削減目標は決して高くはないが、両案はEU(欧州連合)が排出削減義務のない国に求めている数値としては最高水準にあたる。
韓国の温室ガス削減交渉を陣頭指揮している外交通商部の鄭来権・気候変化交渉大使は、「削減の負担を減らすという消極的な立場から抜け出し、積極的な役割を果たすべき」と強調。「先進国と開発途上国の間で激しく対立している温室ガス削減交渉で韓国の立場はその中間にある」と言う。
鄭大使はまた、「自発的な削減目標を提示することで、韓国が先進国と中国・インドなどの開発途上国の間で懸け橋的な役割を果たせるはずで、国際社会もこれを期待している」と述べた。
一方、財界を中心に経済活動への影響を懸念して削減目標設定を警戒する声も出ているが、緑色成長委員会が実施した世論調査では、8月の時点で、05年比8%増加案の支持が44・4%、05年水準凍結支持が34・1%だったが、10月下旬の調査では4%削減案の支持率が52・5%で最も高かった。専門家は、「産業界的には負担となるだろう。これまでに開発した技術を商用化し、今後画期的な技術を開発してこそ守ることができる目標値だ。分野によっても異なるが、例えば韓国の鉄鋼業界は、すでに世界的にエネルギー効率が非常に高い水準に達している。これ以上削減するのは容易でなく、さらに減らそうとすれば莫大な費用がかかる」と指摘。別の専門家は、「産業界が緑色技術を発展させればエネルギー効率が向上するなど利点が多い。目標を低く設定すれば、そうした利点は出てこない。このままでは、化石エネルギーに依存する産業は淘汰される。これを契機に競争力ある産業へと転換させるべきだ」と主張する。一方、緑色委はこれと共に、建築分野に「建築物エネルギー消費総量制」を導入、住宅の場合2012年に冷暖房エネルギーの50%を、17年には60%節減をめざす。また、2025年までにエネルギーの流出を完全に遮断する「ゼロエネルギー建築物」を義務化することにした。
さらに、韓国の温室効果ガス排出の17%を占める交通分野の場合、20年までに排出量を20%以上削減する。このため渋滞道路の通行料徴収の拡大、自動車を共同で利用するカーシェアリング制、エコドライブ推奨などの施策を推進し、公共交通輸送分担率を現在の50%水準から65%水準まで高める。