毎年増え続けている部品・素材を中心とした韓国の対日貿易赤字。これまでにも技術の国産化政策が打ち出されてきたが、幾度となく浮上しては消えてきた。今年は100億㌦の対日赤字縮小を目標に掲げている。韓国の技術国産化、技術対外依存などについて、笠井信幸・アジア経済文化研究所理事に分析していただいた。
政府が最も重視しているのは部品・素材部門の育成だ。その原因は毎年増え続けている部品・素材を中心とした対日赤字であり、2009年も9月末で194億7000万㌦に達している。
しかし、今年は「100億㌦対日赤字縮小」を目標に掲げ、対日輸出拡大可能な有望中小企業100社を選別・集中育成を目論んでいる。
その効果もあってか、史上最高額を記録した08年の同時期の263億4900万㌦より約6900万㌦赤字が縮小している。
しかし、対日依存は深化しているのである。掲げた表の相対的貿易収支比率(対日貿易収支額÷対日輸出額)は、1998年通貨危機以降マイナス方向へ数値が増大している(98年マイナス0・38→08年マイナス1・16)。
この意味は、対日輸出1単位に対する対日貿易赤字の規模が増大していることで、輸出規模と比較した場合に貿易赤字が相対的に大きくなっていることを示している。要するに赤字規模は縮小しているが、対日依存は逆に深化しているのである。
韓国の科学技術の対外依存は、日本ばかりではない。教育科学技術部と韓国産業技術振興協会の技術貿易統計調査結果によると、08年の技術貿易は、輸出25億3000万㌦、輸入(導入)56億7000万㌦、収支額31億4000万㌦の赤字である。技術貿易収支赤字は慢性的であり、06年29億4100万㌦、07年29億2500万㌦と海外の特許や商標、ロイヤリティ、実用新案、デザイン、技術情報、技術サービスなどの導入が輸出を大きく上回り、08年の技術貿易収支比率(技術輸出額÷技術導入額)44・6%と低水準にある。
技術輸出先は、中国が36・6%、米国が25・1%と、2国で全体の60%以上を占めており、他方、技術導入先は、米国が59・8%、日本が11・8%で、2国で全体の71・6%を占める。そして、韓国の3大黒字相手国は中国(7億4000万㌦)、スロバキア(2億6000万㌦)、ハンガリー(1億1000万㌦)であり、3大赤字国は、米国(31億㌦)、日本(5億4000万㌦)、英国(2億3000万㌦)の順となった。韓国の技術取引は、本国本社から賃金コストや市場確保の有利な海外進出支社、工場への製造技術の輸出、例えば中国市場への自動車部品関連技術や携帯電話、パソコン、DVD関連技術などの輸出が主流となっている。
他方、技術輸入では米国からの携帯電話や液晶関連技術のほか、日本からは液晶やMPEG・DVD関連技術などである。こう見ると、先の部品・素材技術の対日依存もさることながら、対米依存が大きいことが分かる。それは液晶パネルやCDMA携帯電話など韓国の主力輸出品目の特許を米国が保有しているからだ。
韓国の技術国産化政策は、これまでは対日赤字の対策・対応として幾度となく浮上しては消えてきた。特に対日赤字が増大する時にはそうであった。しかし、本来技術国産化は、対日赤字対策とは関係なく国内問題なのである。つまり、自らの脆弱な産業技術力を強化するものであり、企業の技術対外依存体質を国家が政策的にどう改善するのかが問われているのである。韓国が技術先進化を標榜するのであれば、企業の瞬間的な「ナンバーワン志向」を改め、永続的な「オンリーワン志向」を定着させなければならない。