韓国銀行が今年のGDP成長率をマイナス2・4%と予測する中、「09年3月企業景気調査結果」では企業景気実査指数(BSI)が1、2月を底にして反転しており、企業側の景況感は好転気味だ。不況トンネルの出口はどこか。笠井信幸・アジア経済文化研究所理事に文章を寄せてもらった。
ソウル市内の桜も散り、レンギョウ、杏子、菜の花も満開から峠を越えようとしている。昨秋から冷え込んでいる不況のトンネルも越えるのであろうか。
最近、韓国銀行の発表した今年のGDP成長率予測はマイナス2・4%である。この数値は、2008年度GDP総額から24兆5746億ウォンの減少であり、その規模は、例えば09年3月時点の就業者(2290万4000人)の1人当たり付加価値生産が107万2940ウォンの減産になる計算だ。さらに、今年の民間消費(マイナス2・6%)、設備投資(マイナス18・0%)、建設投資(1・8%)、商品輸出(マイナス9・9%)、商品輸入(マイナス10・9%)の成長動力が軒並みマイナス成長になると予想している。世
気になるのは雇用状況であるが、同行はマイナス1・3%と予想している。統計庁のデータでもう少し詳しく見ると、リーマンショックが発生した08年9月の就業者数が2373万4000人、雇用率59・8%、失業者が72万2000人、失業率3・0%が、09年3月では就業者が2311万人(62万4000人減)、雇用率57・9%(1・9%減)、失業者95万2000人(23万人増)、失業率4・0%(1・0%上昇)に悪化しており、通貨危機以来100万人失業時代が目前に迫っている。
しかし、こうした予測とは裏腹に企業サイドの景況感は早くも好転気味である。韓国銀行が実施している「09年3月企業景気調査結果」では企業景気実査指数(BSI)が09年1月、2月を底にして反転傾向がみられる。この調査は、2929企業中2169企業の回答をもとに3月の動向と4月の予測を取りまとめたものである。業種は製造業と非製造業に分け設問方式を採り、その内容は、景気水準判断項目(全般的な企業景気、製品在庫、設備投資実行、生産設備水準、労働力事情)と、景気変化方向判断項目(前年同期比項目:新規受注、内需・輸出の生産・搬出状況、稼働率、前月比項目:製品販売価格、原材料購入価格、採算性、資金事情、及びその他項目(経営隘路事項)などが含まれている。そして応答企業からの回答を集計、指数化したものがBSIである。この指数は企業家の景況感を肯定的回答と否定的回答が同数である100を基準として、項目別に肯定的回答数が否定を上回れば100以上、否定的回答が肯定を上回れば100以下を示し企業家の景気実感心理を判断するものである。
全国経済人連合会と中小企業中央会が出すBSI値の傾向は、総じて企業の回復感が強い。輸出企業、内需企業及び中小企業は60以下まで上向き、大企業、非製造業は僅かに60を超える水準まで高まってきた。したがって、この傾向は不況感を感ずる企業家が少しずつ減少していることを示しており、企業現場での事業回復が僅かながら見られてきたと期待できる。
経営隘路事項に指摘される項目のうち最も比率が高い項目である「内需不振」が23・8%であるが、これが前月対比では2・4ポイントの減少で内需不振感がわずかながら改善されてきた。第2番目に高い「不確実な経済状況」も同じく23・7%を占めるがこれも1・9ポイント減少している。同様に「輸出不振」が11・8%で1・6ポイント減、生産設備・労使紛糾・政府規制・季節要因などをまとめた「その他」も3・0%、1・1ポイント減少した。一方で、「為替要因」は19・4%、5・6ポイント上昇している。これは輸出企業のみならず原材料や原油燃料輸入企業の不安感が高いことを示すものである。この結果、内需に関しては少し改善がみられ、外需は依然として経営隘路となっている様子が分かる。
政府の大型投資支援が企業活動の好転に徐々に効いているものと考えられるが、この結果をこのまま引き伸ばして考えることはもちろん早計である。多くの国内研究機関が出す景気回復時期予測は今年後半期から来年前半期を指摘しており、このBSIの結果はあくまで現場で企業家が感ずる景況感のため、この傾向が一過性である可能性すらある。
韓国の景気が回復するこれまでの経験は輸出が伸びて企業の資金ネックが改善され投資が拡大されるか、政府の金融政策支援により資金事情が改善され投資が増大する場合が多かった。通貨危機時はこの両者が進展したが、今回は外需不況の深刻化により政府の金融支援策に期待しなければならない。BSIが100を凌駕するまでは企業金融支援が景気回復の呼び水になろう。不況トンネルの出口はその時見えてくる。