昨年韓国家電メーカーは、バックライトにLED(発光ダイオード)を採用した「LEDテレビ」で世界市場を席巻した。今年は昨日の米CESでも示されたように韓日家電各社にとって「3D元年」となる見込みだ。また、中国勢の追い上げも注目される。ディスプレイの専門リサーチ会社であるディスプレイバンク日本事務所代表の金桂煥氏に文章を寄せていただいた。
2010年が始まった。 今年はバンクーバー冬季五輪、上海万国博覧会、サッカーワールドカップ南アフリカ大会など世界的規模のイベントが予定されており、テレビ業界を中心にディスプレー業界では高い実績数値を目標を掲げている。
ディスプレーバンクの展望によれば今年の中型・大型のディスプレー市場は、09年より約20%以上の成長を見込んでいる。09年の成長を主導したのは韓国メーカーだが、今年はソニーやパナソニックなどの日本メーカーらの大反撃が始まり、最大需要先の中国も供給者としてのシェアを増やし始めると予測される。こうした動きに韓国勢がどう対応するのか、興味深い1年になるだろう。
一昨年の金融危機から始まった急激な需要萎縮と供給過剰は業界全体に一時暗雲をもたらしたが、サムスン電子、LG電子などの韓国メーカーはこれを早期に克服してむしろ投資を拡大した。その結果、テレビ販売で圧倒的な実績を残し、LCD部門では台湾勢を大きく引き離し、韓国メーカーのLCDが世界シェアの53%を占めるに至った。
特にテレビ市場の新しい成長アイテムとしてバックライトにLED(発光ダイオード)を使った「LEDテレビ」が登場し、役360万台を販売。そのうちの200万台をサムスンが占めた。
サムスンは、今年のLEDテレビの販売目標を1000万台と掲げており、実現すれば市場全体規模3200万台の約3割に達する。
LGも600万台を販売する見込みで、今年も韓国2大メーカーが全世界のLEDテレビの半数を供給する見込みだ。
しかし、最近の日本メーカーの動きも侮れない。昨年1年間、日本の主要メーカーは、構造調整を通じて、世界競争に向けた体制強化を実施。OEMの比重を増やすなど多角化を進め、原価削減も可能になった。
LEDテレビの勝者が液晶テレビの勝者になるという予想は、すでに現実のものになっている。13年には液晶テレビの60%がLEDテレビとなる見込みで、その勝負の行方は価格とデザインにあると考える各社の激しい前哨戦を今年は目の当たりにするだろう。
一方、今年のテレビ市場において新たに浮上すると思われるのが立体映像テレビ、すなわち3Dテレビだ。これまで専用コンテンツ不足や高価格など、市場が成立するための多くの課題があった。しかし、最近になり、映画やゲームを中心にコンテンツが充実、主要テレビメーカーの多くが3Dテレビを発売した。これに関連産業が同調すれば価格も現実的なものとなる見込みだ。今年の同市場規模も430万台(北米300万台)に達すると予想されている。
こうした傾向を反映して、先日米ラスベガスで開かれた家電見本市CESでは、主要メーカー全てが3Dテレビを出典した。この新しい競争は、LEDテレビとは全く異なるものを含んでいる。専用コンテンツの調達や放送局との関係などで優位に立つソニーがコンテンツや技術面で有利な一方、画質面ではプラズマテレビが得意なパナソニックの善戦が予想される。対する韓国勢はサムスンがハイエンド製品で、LGはハイエンドから普及型製品まで幅広く展開する予定で、コンテンツの調達と北米放送局との提携も積極的に進め、日本勢と競い合う見通しだ。
このように日本勢の反撃が始まる一方で、韓国勢が圧倒的な優位に立つ液晶パネル部門でも、中国という新しいライバルが現れる見通しだ。
中国液晶テレビ市場の急成長は今年も続き、3700万台規模になる見込みだ。中国の主要都市はもちろん農村地域にまで液晶テレビが普及する見込みで、11年には世界最大のテレビ市場になる展望だ。中国では海外の有名メーカーより中国の地元メーカー製のテレビが多く販売されているが、こうしたローカルメーカーは、液晶パネルを台湾や韓国、日本の順に多く輸入している。このため中国市場をめぐる海外パネルメーカーの競争が激化しており、中国政府は関税引き上げなどの圧力を加えるなどし、生産工場の中国誘致を積極的に進めている。
韓国はサムスンとLGが第8世代ラインを、台湾のCMOとAUOも8世代ラインを、日本のシャープが11年に第6世代、12年に第8世代ラインをそれぞれ稼動させる予定だ。中国もBOEの第6世代と第8世代ラインの建設でテレビ用液晶パネル生産が可能となる見込みだ。これが実現すれば、中国は13年から、液晶パネルを世界に輸出できるほどの生産能力を備えることになる。
中国市場で使われるテレビ用液晶パネルの50%を占める韓国2大メーカーとしては、この状況を機会と危機という両面から捉えねばならぬだろう。中国テレビメーカーに対する供給は拡大するだろうが、中国との技術格差は狭まり、液晶産業の勢力図は変化せざるを得ない。韓国勢は技術と製品の革新を進めながらも技術格差を維持、拡大させていく一方で、中国とのグローバル戦略を共有できるパートナーとしての姿勢も共に備えなければならない。