ここから本文です

2010/05/14

<トピックス>G20、APEC首脳会議控え・韓日中の協力探る~駐日韓国大使館主催ラウンドテーブル

  • G20、APEC首脳会議控え・韓日中の協力探る~駐日韓国大使館主催ラウンドテーブル①

            権 哲賢・駐日本国大韓民国特命全権大使

  • G20、APEC首脳会議控え・韓日中の協力探る~駐日韓国大使館主催ラウンドテーブル②

          黄 淳澤・駐日本国大韓民国大使館経済担当公使

  • G20、APEC首脳会議控え・韓日中の協力探る~駐日韓国大使館主催ラウンドテーブル③

         権 海龍・G20首脳会議準備委員会貿易国際協力局長

  • G20、APEC首脳会議控え・韓日中の協力探る~駐日韓国大使館主催ラウンドテーブル④

             中村 滋・外務省国際貿易経済担当大使

  • G20、APEC首脳会議控え・韓日中の協力探る~駐日韓国大使館主催ラウンドテーブル⑤

    増子 輝彦・経済産業省副大臣(左)、武正 公一・外務省副大臣

 今年11月にソウルでG20(主要20カ国・地域)首脳会議、横浜でAPEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議が連鎖的に開かれる。両首脳会議における韓日中3国間の協力増進策について話し合うラウンドテーブルがこのほど、駐日韓国大使館主催で東京・四谷の韓国文化院で開かれた。黄淳澤・経済公使がコーディネーターを務め、4時間にわたった報告・討論を紙面で振り返ってみた。

◇権 哲賢(クォン・チョルヒョン)駐日大使のあいさつ◇

 現在、世界の経済秩序は転換期を迎えている。戦後、米国中心の西欧社会が主導してきた経済秩序は、地域統合と新興経済国の浮上という2つの新しい要因により変化を余儀なくされている。

 1990年代の冷戦体制の崩壊により、それまでイデオロギー体制に縛られていた各国が、地域国家間の協力を通じた共同繁栄という価値観のもと、新しい地域協力体制を活性化させている。それとともに、情報通信・技術の発展に伴う世界経済の膨張は、非西欧地域で新興経済国を相次ぎ誕生させ、さらには、新しい経済秩序への転換を求めている。

 特に、08年秋の世界金融危機に伴うグローバル経済の停滞は、世界経済の一体性を改めて確認させ、新興経済国が世界経済回復のけん引車として世界経済秩序の前面に登場する契機となった。

 このような変化のなかで、G20とAPECは、世界経済と地域経済協力の中心軸として発展を続けている。11月には韓国でG20首脳会議が、日本ではAPEC首脳会議が開催される。

 11月11~12日にソウルで開かれるG20首脳会議は、世界レベルの経済会議が初めて非先進国で開かれるという意味があり、新興経済国の一員である韓国としては先進国と新興国間の懸け橋としての役割を果たすとともに、G20が名実共に世界経済の協力案について話し合う高級会議として定着することを期待する。

 また、11月13~14日に横浜で開催されるAPEC首脳会議は、「包括的な開放型地域協力の強化」という目標に向かって一歩前進する契機になる。APECの地域協力政策は、民主党政府の政策と一致しており、日本の役割に期待したい。

 世界経済秩序の中心軸が西欧からアジアに移行するなか、アジアでも韓日中3カ国が共存する東北アジア地域の重要性がますます高まっている。


◇会議を終えて 黄 淳澤(ファン・スンテク)・駐日韓国大使館経済担当公使◇

2010年は韓国と日本にとって歴史的に意味深い1年だ。100年前、日本の韓半島に対する強制併合が成立した年であるためだ。その強制併合から100年が過ぎた今年の11月11日から12日にかけて韓国で世界経済の問題を扱う最高会議(プレミアフォーラム)G20首脳会議が開かれ、直後の13日~14日には横浜でAPEC首脳会議が開催される。また、韓日中3カ国首脳会談が今月末に韓国で開かれる予定だ。この100年間に東北アジア情勢や韓国の国家的地位は大きく変化した。しかし、私たちはここで満足せず、来るべき100年に備えなければならない。

 世界経済は2008年9月のリーマンショックを発端とした危機から現在早い速度で回復しているが、いまだギリシャをはじめとした欧州発の経済危機の懸念もあることから、地域よって回復に差があり、回復傾向にある地域でも依然として高い失業率が続いている。

G20韓国首脳会議およびAPEC横浜首脳会議では、世界経済の回復、経済危機の再発防止、今後持続的かつ均衡の取れた成長に向けた協力体制の構築、新成長モデルの構築などについて議論する予定だ。

 今日、世界をはじめ東北アジア経済を議論するに際して中国の参加は必要不可欠だ。そうした意味から、今年のG20およびAPEC首脳会議で中国の参加と寄与が何よりも重要となってくる。こうした背景の中、駐日韓国大使館は年初から「2010 G20・APECにおける韓日中協力」を議論するためのラウンドテーブルの開催を準備してきた。日本の外務省や経済産業省もわれわれの趣旨に積極的に同意し、両省からは副大臣にも参加いただいた。

 今回の会議を通じて参加者から出された合意事項は大きく分けて次の3点に集約される。

 まず第1に、韓日中3国間の協力の必要性に対する合意だ。3国間の経済共同体に向けた協力増進の必要性が強調された。

 このために今回の会議では、韓日中3国の地域経済統合のためのビジョン宣言、3国間協力増進のための常設事務局設置などの提案がなされた。また、韓日中3国間には、関税撤廃を通した「静態的効果」だけでなく、投資やサービス分野の開放を通した「動態的効果」が大きいという分析もなされた。

 2番目は中国の役割増大の必要性についての合意だ。会議参加者は、地球上のほとんどすべての問題について国力に相応する国際社会の責任ある一員としての中国の存在と寄与なくしては解決できる問題はないという一致した意見を表明。人民元切り上げなどを通した中国の内需拡大が必要だという指摘があった。また中国の世界経済における成長動力としての健全な提案と役割が何よりも必要だという意見が出された。

 3番目に、今会議で日本のG20に対する積極的な立場とG20韓国サミットの開催成功への意思を確認することができた。今会議で日本側参加者の一人は、G20がこれまで、ワシントン、ロンドン、ピッツバーグでの3会議を経て「危機管理」の役割は果たしたが、今後は世界経済の「持続的成長」を継続させる役割があり、その重要性は今後も続くと発言した。特に世界経済の回復について、「持続可能な均衡成長のための協力体系」の構築がカギとなるため、中国の参加が重要であり、また11月のG20首脳会議で、これに関する最終報告書を出さなければならないので韓国でのG20サミットは、必ず成功しなければならないという立場を表明した。

 また、今会議では、世界経済が回復傾向にあるが、そのために危機感が低下し、G20の結束力が多少緩んでいるといった点が指摘されたが、まだそうした時期でないということでも参加者らと認識を共にした。これは会議開催後、5月初めに発生した欧州発経済危機を見れば、会議参加者に先見の明があったと考えられる。

 韓国大使館としては、日本の一般市民との直接対話をする、いわゆる「パブリック・ディプロマシー(Public Diplomacy)」も積極的に遂行できたという側面からも開催の意義が大きかったと考える。


◇権 海龍(クォン・ヘリョン)・G20首脳会議準備委員会貿易国際協力局長◇

 東アジアの3国が協力してG20そしてAPECの両会議が成果を出せるようにすることが重要だと考えている。

 昨年11月にG20首脳会議準備委員会が発足した。さまざまな部署が担当していたG20関連業務を同準備委員会に統合して首脳会議を準備している。準備委員会は、大統領直属であり、現在約80人のスタッフを擁している。

 G20ソウルサミットでは、大きく分けて2つのテーマについて話し合いを行う。一つ目はピッツバーグ首脳会議で話し合った内容が、どれだけ実践されたかのチェック。もう一つは新たな議題であり、韓国が関心を持って進めている議題だ。まず、既に合意された一つに出口戦略がある。ピッツバーグ首脳会議で経済回復が確かになる時期に出口戦略を施行し、出口戦略の順番、時期は国によって異なることがあるということを認めた。そして今年は今般の危機を克服するため、政策的な協調を強める。

 そして次のテーマは、持続可能なバランスの取れた協力体制である。ピッツバーグ首脳会議は、国家の中期政策を相互に検討し、その検討を合意した。そのため経常収支の赤字国、黒字国の間でのバランスを取り、そして国家間の開発の差を是正し、成長潜在力を向上させることを目標としている。

 さらに国際金融改革がある。昨年ピッツバーグでの合意事項を見ると、世界銀行は開発途上国に3%、IMFは5%ほどのクオータ(出資割当額)を移転、1000億㌦を追加支援する。

 もう1つの重要なテーマは、金融規制改革。経済危機をもたらした過去の慣行に戻ることを防ぐため持続的に行うのが重要だというのがピッツバーグでの合意事項だ。

 次に韓国政府が推進する計画について説明する。グローバル金融安全網を推進することだ。これは持続可能な経済成長を支援する方策の一つで、小規模開放経済が脅威にさらされた時、攻撃的に、これを防ぐことを目標としている。

 もう一つのテーマは開発だ。持続可能な成長のためには、最貧開発途上国が成長できる土台を提供する必要がある。G20議長国である韓国は開発に成功した直接的な経験を持っており、多くの開発途上国が韓国の役割を期待している。


◇中村 滋・外務省国際貿易経済担当大使◇

 APECと呼ばれるアジア太平洋経済協力会議は、基本的に東アジア、米州大陸を結ぶ枠組みである。1989年に創設され、昨年20周年を迎えた。APECの目的は、アジア太平洋の持続可能な発展をめざすために経済統合と域内協力の推進を図って、アジア太平洋の共同体を構想するというものだ。

 APECの最大の特徴は、ビジネス界と緊密な連携が行われていることだ。APECは現在21の国と地域が加盟しているが、関係者にはトラベルカードというものを発行して、欧州連合(EU)のように自由に行き来することができる。

 G20がマクロ経済について議論するのに対して、APECは現実に貿易といった問題について実行性あるプロジェクトを動かしていく役目を果たしている。そして、新たな成長戦略の作成という役目も果たしている。これは昨年のシンガポールAPECサミットでも議論されたことで、今回の横浜サミットでの具体化をめざす。

 学術的な見方になるが、成長と一言でいっても様々な分野がある。まず、我々が柱として掲げていることだが、マクロ経済に着目した「均衡ある成長」の推進、社会的側面への対応を重視する「あまねく広がる成長」、エネルギー問題を含めた環境面に配慮した「持続可能な成長」、そしてイノベーション、知識経済に裏打ちされた「革新的成長」、それからすべての成長の基盤となる「安全な成長」という5つの成長に分類される。

 中でも、「均衡ある成長」と「持続可能な成長」はG20のピッツバーグ会合で議論された内容でもある。今までの成長は量を重んじたものだったが、今は質を重要視しなければならないという時期に差し掛かっている。

 APECは、こういった成長戦略を議論し、重ね合わせ、各国の政策として展開されていくよう提言していきたい。また、APECとしてはやはり、今年11月にソウルでG20サミットが行われた直後に横浜サミットが行われるということで、一連の流れを確保するために、密接な連携を、これまで以上に図っていきたいと思う。


◇武正 公一・外務省副大臣◇

 鳩山総理は長期的ビジョンとしてアジア共同体構想を提唱している。東アジア地域にはAPEC、ASEAN+3をはじめとする様々な地域協力の枠組みが存在する。この中で日韓および日韓中の協力は重要な枠組みの一つである。GDPの合計が世界の17%を占め、グローバルな影響力を有している日韓中が協力することは、東アジア、ひいては世界の安定と繁栄につながる。

 また、日韓中の連携は、北朝鮮をはじめとする諸懸案の総括的解決を図り、北東アジアの安定をめざす上でも重要である。こうした中、日韓関係を考える際にも日韓の関係だけに目を向けるのではなく、グローバルな日韓関係を展開していくことが重要である。日韓両国が連携して世界に目を向け、経済や気候変動問題を含む環境、途上国支援など、さまざまな分野で共に汗をかくことにより、お互いの力が発揮できると考えている。

 わが国として引き続き、日韓中の協力と同様、地域協力の屋台骨ともいえる日韓協力関係の深化に努めていきたい。こうした観点からとりわけG20における国際経済協力を通じ、世界経済の持続的成長を達成していくことは、極めて重要であり、ソウルサミットがそのための国際的な努力を結集する場となるよう努力したい。また、アジア各国の経験やAPECにおける地域統合や成長戦略の議論は非常に有益である。


◇増子 輝彦・経済産業省副大臣◇

 鳩山総理は東アジア共同体構想により、経済面、文化面をはじめとして、あらゆる側面で東アジア諸国との連携強化を打ち出している。中でもその中核を成すのが日韓中で、3国の連携が最も重要であると認識している。アジアの経済連携強化を進める上で、3国の経済連携が大きなインパクトとなっていくだろう。日韓中FTA(自由貿易協定)の産学協同研究会について、すぐにでも開催すべく、3国間で調整を行っている。また、日韓中投資協定については、交渉の最終段階にあり、出来る限り早期にまとめたいという強い意欲を持っている。さらに3国の連携強化の基礎となるうるべき日韓EPAについても、一刻も早く交渉を再開させることが重要だ。

 韓国で開催されるG20も日本が議長を務めるAPECも世界経済を牽引していく上で、重要な会議になることは間違いない。11月には首脳会議が連続して開催される機会を通して、日韓両国の緊密な連携を世界に示す大変良い機会となるだろう。

 かつてわが国は韓国とサッカーワールドカップを共催して成功に導いたという大変良い経験がある。今回、G20とAPECを共に力を合わせて成功させていきたいと思う。G20でのマクロ的な議論も踏まえながら、APEC域内での成長の方向性をしっかりと打ち出したいと考えている。そのためにも、日韓中が中心となって取り組む必要がある。