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2010/03/05

<トピックス>世界の途上国に"経済韓流"

  • 世界の途上国に

    第2回韓国・アフリカフォーラムで手をつなぐ各国代表。
    中央は柳明桓・外交通商部長官(昨年11月)

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    海外からのプラント受注は今年500億㌦を突破する見込み

 今年11月にソウルでG20(主要20カ国・地域)首脳会議を開催する韓国。議長国として一躍、世界経済をリードする立場になった。昨年末にはOECD(経済協力開発機構)のDAC(開発援助委員会)に加盟、開発途上国に援助する国家の仲間入りをした。このような国際社会での地位上昇に伴い、責任も重くなっている。これに応えるべく、途上国向けODA(政府開発援助)規模を2015年までに08年の8億㌦から30億㌦水準に引き上げる計画だ。特に単なる資金援助にとどまらず「漢江の奇跡」といわれる韓国の開発経験を伝授すべく多様なプランが練られている。海外市場でサムスンなどのメイド・イン・コリアの知名度は近年急上昇中だ。また、造船や建設、プラント(産業設備)などに続き原子力発電所の受注にも成功、韓国の存在感はにわかに高まっている。大衆文化では韓流ブームが起こったが、今度は「経済韓流」となるだろうか。

 企画財政部は、開発途上国に経済政策全般に対する韓国の発展経験を伝え「経済韓流」を広げることを目標に、今年はベトナムでテスト事業を実施し、これを踏まえ東南アジアや中南米、アフリカ、独立国家共同体(CIS)、中東へと事業を拡大する計画だ。

 政府が考えている経済韓流は、経済発展経験共有事業(KSP)を軸に進めようというもの。これは、包括的経済政策コンサルティングを提供する事業で、対象国を今年のベトナム、インドネシア、ウズベキスタン、カンボジアの4カ国から、来年は7カ国、2012年には10カ国に増やす。ここから発掘された5000万㌦以上の中・大型事業を中心に、対外経済協力基金(EDCF)で支援する。

 だが、「経済韓流」の意味はさらに広がりをもつ。東南アジア、アフリカ、中南米など地域別に経済協力の現状をみてみよう。

 アフリカに対しては、2012年までにODA供与規模を08年比で2倍以上増やす方針だ。

 対アフリカODA供与はまだ始まったばかりで、08年末現在の累計で1億800万㌦(無償7400万㌦、有償3400万㌦)にすぎない。今年から本格的な開発援助体制を整えて取り組むことになった。政府は特に、韓国の開発ノウハウの伝授と現地力量の強化を目標に、アフリカ各国の実情にあった支援を行う計画だ。

 昨年11月に開かれた第2回韓国・アフリカフォーラムで採択されたソウル宣言は、アフリカで問題になっている水資源の枯渇や耕作地の縮小、砂漠化、気候変動などの対策にも集中投資することを謳っている。具体策としては、12年までにアフリカから研修生5000人を招く一方、アフリカ諸国に海外ボランティア団を1000人以上を派遣する。また、農業インフラ構築や農業技術近代化を集中的に支援する。

 韓国はG20首脳会議議長国として、先進国と開発途上国の懸け橋の役割を強めるため、アフリカなど開発途上国の貧困撲滅と開発協力を呼びかける考えだ。

 ASEAN(東南アジア諸国連合)とはFTA(自由貿易協定)が発効するなど経済関係が緊密化している。

 昨年10月の韓国・ASEAN首脳会議でも双方間の協力強化に一致し、「戦略的パートナー」に格上げする検討に入った。重点協力テーマは①開発協力②低炭素・グリーン成長③文化・人的交流の3点。

 韓国は、低炭素・グリーン成長分野で東アジア気候パートナーシップ基金2億㌦から1億㌦を対ASEAN協力事業に活用し、インドネシア、ラオス、ミャンマー、ベトナム、カンボジア、フィリピンを対象に調査する。また、気候変動対応分野で、アジア山林協力機構の設立を進める。このほか、シンガポール、フィリピン、インドネシアに韓国文化院を新設し、ASEANとの文化交流に向けた拠点を設ける計画だ。

 カザフスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタンの中央アジア5カ国との間にも協力フォーラムが結成されており、各種協力事業を進めている。

 政府は、中南米の経済協力強化のため初めて本格的な総合対策をまとめ、今年から本格的に推進している。資源の宝庫であり、高い購買力と成長の可能性を秘めた中南米地域が主要経済パートナーとして浮上しているからだ。

 まず今年取り組む重点課題は、ペルーやコロンビアとFTAを締結、メルコスール(南米南部共同市場)との貿易障壁を解消する。特にブラジルとは経済長官相会議の設置を進め、ブラジル高速鉄道事業の韓国企業の受注を支援する。特に同国で2014年サッカー・ワールドカップ、16年夏季五輪の成功へ向け韓国での経験を生かしたコンサルティングを提供する。また、グアテマラ、ボリビアなど中南米地域には12年までに2600億ウォンの対外経済協力基金の支援を行う。

 中南米との協力分野は資源、エネルギー、環境、農業、建設、インフラなどに多角化する方針だ。ベネズエラ、ペルー、コロンビアとの間に設置した資源協力委員会を通じ、油田・ガス田協力事業を進め、ブラジル、ペルー、エクアドル、ベネズエラとは環境協力を実現する。山林バイオマス確保にも力を入れ、パラグアイ、ウルグアイへの山林投資進出を促進する一方、チリ、ペルー、メキシコでは韓国企業の海水淡水化事業参入を拡大する。また、韓国の経済発展経験共有事業の対象国に新たにペルーなどを加える。中南米の主要IDB(米州開発銀行)事務所に年間20人の韓国人インターンを配置する。

 企画財政部は、中南米とは経済・産業構造が相互補完的なため相乗効果が高い経済協力パートナーシップを構築できると判断、インフラ構築と教育訓練分野にも協力事業を拡大する計画だ。


◆海外投資、年間300億㌦超す

 企業の海外投資急増も韓国の存在感を高める効果がある。

 2005年に100億㌦に満たなかった海外投資は、08年から300億㌦を突破した。昨年は世界不況の影響で304億2000万㌦と前年を下回ったが、第4四半期(10~12月)には実績で102億500万㌦を記録、前年同期の78億5600万㌦を大きく上回った。

 海外投資の急増は、韓国企業のグローバル化を反映している。現代・起亜自動車の海外工場建設もその一つ。最近、起亜自動車の米ジョージア工場が完工したが、不況の地元では「救世主がわが町にやってきた」と大歓迎、850人の求人に4万人が殺到した。同工場の投資額は06年から3年間で10億㌦にのぼる。

 サムスン電子は昨年12月にポーランドの家電メーカー、アミカを7600万㌦で買収した。また、今年1月には米国半導体技術会社のランバスと契約を結び、発行株式を2億㌦で買収することになった。

 ポスコは昨年4月、インドとタイにそれぞれ鉄鋼加工センターを完成した。8月にはメキシコに自動車鋼板生産工場を建設、稼動させている。10月にはベトナムに東南アジア最大規模の冷延鋼板生産工場を竣工。同工場には5億㌦以上を投入した。

 このように韓国企業の海外投資が急増しているのは、中国や新興国への生産基地移転を増やしているからだが、韓国企業の現地工場が相次いで建設され、雇用も創出されるのに伴い、韓国企業の存在感も次第に高まっている。


◆海外から受注相次ぐ建設、造船、プラント、原発・・・◆

 中東ドバイに世界一高いビルが完成、話題になったが、総合施工したのはサムスン建設だった。

 韓国企業は中東や東南アジアなどで相次いで受注・施工しているが、建設にとどまらず造船受注は世界を制覇する勢いだ。これと共にプラント受注も急増、今年は500億㌦を突破する勢いだ。

 さらに世界で建設できる国・企業が限られている原子力発電所の分野でも力をつけ、世界各国から引き合いが相次いでいる。

 プラント輸出は、韓国の経済力上昇とともに増加し、05年の158億㌦から昨年には史上最高の463億㌦に達した。政府と業界関係者は、今年は海外受注センターの強化や核心人材育成を通じて500億㌦の大台に乗せたいとしている。

 韓国の原子力発電所を導入する動きも目立っている。トルコやインドからはすでに関心を表明しているが、リトアニア、ポーランド、ヨルダン、モロッコなども相次いで関心を示している。昨年末のアラブ首長国連邦(UAE)からの原発受注が世界を驚かせたが、今後これらの国と具体的な商談に発展するのか注目される。