今年の韓国最大の行事は11月11―12日にソウルで開催されるG20(主要20カ国・地域)首脳会議だ。李明博大統領はこの会議を「韓国の国格向上と国運隆盛の大きな転機」(3月1日の独立運動記念日の演説)と位置づけ、大統領直属の準備委員会を発足させるなど本格的な準備作業に入った。世界経済の重心がアジアに移る中で、G7、G8に代わる国際経済協議の場として浮上しているG20サミットがアジアで初めて韓国で開かれるだけに世界の注目度も高い。議長国として会議を采配する韓国の手腕が試されることになるが、「先進国と途上国の懸け橋」という重要な役割も果たさなければならない。G20サミットまであと8ヶ月。現況と課題をまとめてみた。
世界経済は回復の兆しをみせ、昨年マイナス成長に陥った主要先進国も今年はプラス成長に転じる見込みだ。だが、財政政策をめぐりギリシャで大規模ストライキが発生するなど世界経済の現状は必ずしも楽観を許せる状況にない。
こうした中で、今年のG20は6月にカナダで第4回首脳会議を開き、その結果を踏まえて11月のソウル会議で本格的な対策を講じることになっている。
G20の今年、どんな展開をみせるのだろうか。先月末に仁川・松島(インチョン・ソンド)で財務次官・中央銀行副総裁会議が開かれ、11月にソウルで開催されるG20首脳会議まで続く一連の公式プロセスのスタートを切ったが、会議は議長国、韓国が主導した。申斉潤(シン・ジェユン)・企画財政部国際業務管理官と李光周(イ・グァンジュ)・韓国銀行副総裁補が共同議長を務め、世界経済危機以降の現状評価とともに、昨年のG20首脳会議や財務相会議などで合意事項を点検した。
具体的には、①出口戦略②貿易不均衡解消③グローバル金融安全網構築④国際金融機関改革問題が協議された。参加国は、世界経済の回復基調を強めるには当分の間は拡張的政策を維持する必要性があるが、各国の事情に応じ出口戦略を実施するにしても、情報公開や意思疎通など国際協調は持続されるべきとの認識を共有した。
韓国はこの中で特に、グローバル金融安全網の構築に力を入れている。これは、対外衝撃に伴う資本移動の変動性拡大による外貨流動性不足に対処するための国際協力のメカニズムだ。海外で金融危機が発生しても、途上国と新興国は大きな衝撃を受けざるを得ない現実があり、外国資本が一挙に流出して外為市場と金融市場はパニックに陥りやすい。グローバル金融安全網が構築されれば、新興国と途上国は外貨準備高の拡充にこれまで以上に苦心しなくても済むようになるというものだ。
しかし、韓国と共に積極導入を主張している新興国や途上国に対し、欧州など一部先進国では費用負担増加などを懸念し消極的な立場を示している。IMF、世界銀行のクオータ(出資割当額)の一部を新興国に移譲する金融機関改革問題も、これといった結論を出せなかった。
この金融改革問題について、ノーベル経済学賞受賞のコロンビア大学のジョゼフ・スティグリッツ教授は、「G20のソウル会議では、金融危機を防ぐための拘束力ある金融規制が必ず論議されなければならない」と強調。特に規模の大きい銀行は絶対つぶれないという問題について真剣に協議する必要があると提言している。
企画財政部の申管理官は、「開発途上国のみならず、先進国も金融安全網は構築されなければならないシステムと認識している」として、専門家グループが中間報告を6月までにまとめ、11月の首脳会議に最終報告書を提出する計画だ」と明らかにした。
今年のG20はまた、地球温暖化問題など協議対象を拡大しており、今後4月と6月のG20財務長官・中央銀行総裁会議で議題を整理し、カナダでの首脳会議で協議する。この首脳会議の結果を受け、9月に光州で開かれる財務次官・中央銀行副総裁会議、10月に慶州で開かれる財務長官・中央銀行総裁会議でソウル首脳会議の議題を最終的に調整する。
◆G20準備委が本格稼働・韓国の成功体験モデルに◆
G20首脳会議準備委員会の司空壱(サゴン・イル)委員長は、ソウルG20首脳会議の議題について、韓国の経済開発や危機克服モデルを組み込む方針だ。今年1月の記者会見でも「韓国は経済開発ノウハウと併せ、通貨危機を成功裏に切り抜けた経験を持っている」と述べ、成功の経験を盛り込んだ「コリア・スタンダード」を作る考えを示した。「途上国と先進国の懸け橋」というG20開催国初の役割が注目される。
また、世界の有力CEOが大勢出席する「G20ビジネスサミット」に参加する世界の有力CEOの声も共同声明に反映する考えも示している。
司空委員長は、すでに与えられた議題だけでなく、韓国が推進する議題にも積極的に取り組み、「ソウル・イニシアチブ」として記憶に残るようにするとの決意で準備を進めている。
ソウルG20首脳会議準委は、昨年11月、大統領直属機関として発足。李明博大統領主宰のもと青瓦台で開かれた初会議で、1万人を超える参加国代表団と取材団の収容能力などを勘案して、ソウルを開催都市に最終決定した。
◆韓国成長率今年4・5%、G20で5番目の高さ◆
G20の中で韓国経済は今年も、昨年に続き、5番目に高い成長率を記録する見通しだ。
IMF(国際通貨基金)が仁川・松島で開かれたG20財務次官・中央銀行副総裁会議に提出した経済見通し報告書によると、昨年のG20構成国の平均経済成長率推定値は前年比マイナス0・7%だった。韓国は0・2%のプラス成長で、中国(8・7%)、インド(5・6%)、インドネシア(4・3%)、オーストラリア(0・8%)に次いで高い成長率だった。
G20の中で昨年プラス成長を達成した国は、これら5カ国とサウジアラビア(0・1%)のみ。中国、インド、インドネシアは開発途上国に属し、オーストラリアは資源大国だ。輸出依存国の韓国が昨年の厳しい世界不況のなかでプラス成長を遂げた意味は大きい。
今年は世界経済の回復に伴い、G20のすべての国がプラス成長を記録すると予想される。中国が前年比10・0%で最も高く、次いでインド7・7%、インドネシア5・5%、ブラジル4・7%、韓国4・5%の順だ。
今年のG20の平均成長率は4・3%で、先進国は日本の1・7%をはじめ1%台にとどまっている。
◆G20ビジネスサミット・世界のCEO大挙参加へ
G20首脳会議が開かれる11月に世界経済をリードするCEO(最高経営責任者)ら経済界トップ100余人が「ソウルG20ビジネスサミット」に参加するためソウルに集結する。同会議を準備するソウルG20ビジネスサミット組織委員会が今月10日にソウル・汝矣島のKTビルに事務所を開設し、公式業務を開始した。
崔炅煥(チェ・ギョンファン)・知識経済部長官と孫京植(ソン・ギョンシク)・大韓商工会議所会長、趙錫來(チョ・ソンネ)・韓国全国経済人連合会長の3氏が同組織委の共同委員長を務める。
G20ビジネスサミットは、G20首脳会議の前日の11月10から2日間開かれ、貿易や投資、金融、グリーン成長、企業の社会的責任などの分野で意見を交わすことになる。組織委員会関係者は、「政界と財界の世界的リーダーが一堂に会し、経済危機脱出のための対策を模索する場となるだろう」と語った。
会議に参加するのは、世界一の富豪でマイクロソフトの創業者ビル・ゲイツ氏、アップル社のスティーブ・ジョブズCEO、欧州を代表するシーメンス社のペーター・レッシャーCEO、中国のコンピューターメーカー、レノボ社の楊元慶会長、インドのタタ自動車のラタン・タタ会長ら錚々たる顔ぶれだ。日本からは日本航空の再建を任された京セラグループの稲盛和夫名誉会長が参加する。
また、グーグルのエリック・シュミットCEOやソロス・ファンド・マネージメントのジョージ・ソロス会長、ゼネラル・エレクトリック(GE)のジェフリー・イメルトCEOら世界的に知られる企業家も参加する予定だ。
韓国からは、李健煕(イ・ゴニ)・サムスン前会長、鄭夢九(チョン・モング)・現代自動車会長、具本茂(グ・ボンム)LG会長ら財界トップが顔を並べる予定だ。
G20首脳会議が始まって今年で3年目になるが、首脳会議と財界サミットが同時に開催されるのは今回が初めてで、世界の政財界トップが一堂に会することになる。