日米中の間で繰り広げられている「為替戦争」が欧州に飛び火し、新興国にも影響を及ぼすなど世界的な問題になってきた。韓国はすでにこの戦争の影響で、急激なウォン高に見舞われており、電機、自動車などの輸出業界に影を落としている。さらに、来月にソウルで開かれるG20(主要20カ国・地域)首脳会議の主要テーマに浮上する可能性もあり、議題として選択すべきかどうか新たな難題となっている。
6日の為替レートは、前日より12・7ウォン高の1㌦1118・0ウォンを記録、3カ月前に比べ10%、昨年3月に比べては30%以上の切り上げだ。予想を上回るウォン高で輸出の先行き懸念が強まっている。
日本銀行は5日、円高圧力を背景にゼロ金利政策に踏み切り、株関連資産の購入も含めた5兆ウォンの供給資金を追加、米連邦準備制度理事会も来月により一段の金融緩和に踏み切る見通しだ。中央銀行が市場に資金供給を増やせば当然通貨切り下げ効果をもたらす。
一方、米国だけでなくEUも加わった元の切り上げ圧力に対して、中国は慎重だ。元が低評価されている現実あり、6月から管理変動レート制に移行したものの、ドルに対する切り上げ幅は3%以内にとどまっており、EUに対してはむしろ切り下がっている。中国としては、過去に日本が「プラザ合意」で円高を受け入れ、資産バブルの崩壊と「失われた20年」に繋がった教訓を他山の石として、「外圧による通貨価値是正」には敏感だ。
今回の通貨戦争の発信源は米国にある。景気を浮揚させるためドル安を容認し、輸出を増やしたいからだ。この米ドル安のため、韓、日、中の通貨価値が上昇しているのがこの間の流れだった。
しかし、韓日中3カ国の対応には違いがある。中国は人民元の価値が一気に上がらないよう事実上固定している。日本は先月15日の大量介入で円高の勢いを一時的に阻止したのに続き、今回のゼロ金利だ。
韓国は事情が異なる。ウォンが低評価されている現実のため、日本や中国のように大胆に市場介入するのは難しい。来月に迫ったソウルG20首脳会議の議長国である韓国が市場に直接介入すれば、国際的な非難を免れない。韓国は通貨危機後の1998年から毎年、経常収支黒字を記録。今年も8月までに経常収支黒字が195億6000万㌦に達している黒字国でもある。
しかし、韓国はGDP(国内総生産)に占める輸出比率が43・3%に達し、G20の国家のうち最も高い。このためウォン高が景気に与えるマイナス効果は日本や中国よりも大きい。サムスン経済研究所は1㌦=1050ウォンまでウォン高が進めば、国内91社の主力輸出企業の営業利益は5兆9000億ウォン減ると予想している。
韓国銀行は7月に0・25%利上げし、追加利上げを見計らっているが、先進国の超低金利政策と通貨切り下げ競争で、事実上困難になっている。
こうした中、世界70カ国の420の主要金融機関が加盟するIIF(国際金融協会)は、最近の通貨をめぐる葛藤と世界経済の不均衡を解消する新しい国際合意の必要性を訴えている。IMF(国際通貨基金)のストロスカーン専務理事は、為替問題をG20の主要議題として扱わなければならないと主張。ブラジルのメイレイス中央銀行総裁も「一部の国が輸出競争力を高めるため自国通貨の価値を下げている」と批判、米中だけの問題ではなくG20での討議が必要だとしている。大国が自国通貨価値を引き下げれば、新興国への影響は甚大だからだ。
韓国としては、ウォン高への対応とともにG20での対応に迫られる格好となっている。ただ、各国が先鋭に対立している為替問題が主要テーマとして浮上しすぎると、グローバル金融安全網など韓国がこれまで準備してきた核心議題が後方に追いやられる公算が強くなる。政府は今回のG20首脳会議で金融安全網をはじめG20非会員国に対する開発支援、IMFクオーター(持分率)改革などに対する合意を引き出し、G20の歴史に残る「ソウルイニシアチブ」としてまとめる構想だが、不安となってきた。
尹増鉉(ユン・ジョンヒョン)・財政経済部長官は、「全世界的な為替問題は今月21日に慶州(キョンジュ)で開かれるG20財務長官・中央銀行総裁会議で論議される。G20の議長国として為替論議を仲裁する役割を果たす」との立場だ。だが、為替戦争が解決の糸口をつかめず、米下院が特定国を狙い撃ちした「公正貿易のための為替改革法」という保護貿易を触発する法案を可決しており、楽観はできない。「為替戦争のため成果のないG20首脳会議になってはならない」と憂慮する声も聞かれるが、そうないよう対策が急がれよう。